ミズノが展開している作業靴。業種ごとに適した機能を備えている=大阪市住之江区

運送や建設の業界で人手不足が深刻化する「2024年問題」や、担い手の高齢化を受け、高性能な作業靴の需要が高まっている。そこで日本を代表するスポーツ用品メーカーが、スポーツシューズの開発で培った技術を応用しながら、軽くて動きやすい作業靴を提供。売り上げを伸ばすとともに、現場での従業員の負担軽減にも一役かっている。

4月中旬、インテックス大阪(大阪市住之江区)で開かれた物流業界の展示会。ミズノ(同区)のブースには、従来の硬く重いイメージの作業靴とは異なり、一見、運動靴のようにも見えるカラフルな靴が並んだ。

運輸業に適しているという靴には、車の運転ですり減りやすくなる靴底のかかと部分に、ゴムを高くするなどの工夫が施されていた。訪れた男性は「従業員から疲れにくい靴がほしいといわれて見に来た」と話し、靴の形状や重さを確かめた。

スポーツ用品メーカーの技術を用いた高性能の作業靴や作業服の需要が急速に伸びている。ミズノは平成28年に作業靴の分野に参入、30年には作業服の展開も本格的に始めた。業務用品を合わせたワークビジネス全体の売り上げは30年度に39億3千万円だったが、令和4年度には97億1千万円と拡大。7年度は4年度比7割強増の170億円を目指す。ワークビジネス事業部の箕輪陽一次長は「作業効率が良くなる靴を提供することで、24年問題の解決にも役立ちたい」と意気込む。

アシックス(神戸市)はミズノより一足早く平成11年に作業靴事業に参入。油を含んでも滑りにくく劣化しにくい靴底の「CPグリップソール」は、工場などの現場で支持を集める。一方で、これらの製品は1万円を超え、作業靴専業メーカーの製品に比べて倍以上の高価格になる傾向にある。アシックスのカテゴリーマネジメント部長の五十嵐祐介氏は「人手不足によって、価格が高くてもいい靴を求める企業が増えている」と話す。

アシックスの作業靴(同社提供)

スポーツ用品メーカーが作業靴の分野に参入した理由について、これまでも機能性を追求してきた技術があるので「参入コストが低い」と指摘するのは立命館大スポーツ健康科学部の安邦(あんぼん)講師。「自社の利益はもちろん、仕事環境の改善という社会貢献の点でも期待できる」と話した。

(桑島浩任)

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