米大統領選で6日、共和党のトランプ前大統領の当選が確実となった。トランプ氏は8月、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営について「大統領は少なくとも発言権を持つべきだ」と主張しており、中央銀行の独立性を揺るがす恐れがある。
トランプ氏は大統領在任中から再三にわたってFRBを攻撃してきた。2017年の就任後にパウエル氏を議長に指名したものの、FRBによる18年の利上げに不満を持ち、人事介入をちらつかせて利下げを求めてきた経緯がある。
今年2月には米FOXビジネスのインタビューで、大統領に再選した場合、26年に任期切れとなるFRBのパウエル議長を再任しない意向を言明。「政治的だ」とも批判した。
その後、6月のブルームバーグではパウエル氏について「正しいことをやっていると私が判断できれば、彼に任期をまっとうさせるだろう」とやや発言を修正した。「政策金利を維持する必要がある」と述べて、選挙前に利下げを実施すべきではないとの認識も示した。
パウエル氏は7月、政治的な介入に予防線を張った。金融政策は「データ、見通し、リスクバランスに基づき、それ以外のものには左右されない」と強調した。
9月にFRBが実際に0.5%の利下げを決めると、トランプ氏は「経済が非常に悪いか、彼らが政治的駆け引きをしているかのどちらかだろう。これは大幅な利下げだった」と述べた。別のインタビューでは「政治的な動きだ。ほとんどの人はその半分になると思っていたし、おそらくそれが正しい判断だっただろう」と述べ、FRBを批判した。
とはいえ、トランプ氏はそもそも低金利志向だ。ソニーフィナンシャルグループの渡辺浩志金融市場調査部長は長期金利が上昇していることについて「トランプ氏によるFRBへの利下げ強要などが、中銀の信認や独立性を脅かしていることが原因」と分析する。
そもそもトランプ氏による関税の引き上げや拡張的な財政政策は、インフレの再燃をもたらす。FRBは利下げ局面に入ったが軌道修正を迫られる可能性がある。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「利下げ停止では終わらず、利上げが必要となる可能性もある」と指摘する。
米経済は減速傾向にある。10月の雇用統計では非農業部門の就業者数は前月比1.2万人増にとどまった。自然災害など一時的な要因もあったが、予想された10万〜11万人増への鈍化をさらに下回った。
FRBは6〜7日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。市場参加者は0.25%の追加利下げを織り込んでいる。パウエル氏が今後の利下げについてどのように言及するかが焦点になる。
仮にインフレ率が上昇してもFRBが利上げせずに放置した場合、物価高は収まらず、国民生活に打撃となる。個人消費が鈍って、景気停滞とインフレが併存するスタグフレーションのリスクが増大する。
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