中小企業を対象にした国の「IT導入補助金」で、不正受給が相次いでいたことが、会計検査院の調査で分かった。ベンダーなどのIT支援事業者は企業とともに虚偽申請による過大な補助金の交付を受け、関係会社がキックバックを行っていた。2020〜22年度で不正の金額は、計1億812万円(41件)に上る。  検査院は21日、事業を行う独立行政法人「中小企業基盤整備機構」に対して、23年7月まで補助金手続きの事務を担っていた一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ協)に不正受給分を返還させるよう求めた。  事業を所管する経済産業省中小企業庁は「指摘は誠に遺憾。不正受給のあった事業者には今後も厳正に対処する」とコメントした。

◆虚偽の導入報告で補助金受給、キックバックも

 IT導入補助金は、中小企業などが生産性向上につながるITツールを導入する場合、費用の一部を支援する。企業のIT化を円滑に進めるため、支援業者のベンダーなどが登録制のパートナーとして、導入支援や申請の取りまとめだけでなく、不正受給へのチェックも担うとされている。  検査院が20~22年度に交付された約10万4000件(計約1464億円)を対象に調べた結果、計1億812万円で不正を確認した。具体的には、ベンダーの支援を受けた企業は、虚偽のIT導入報告によって補助金を受給。ベンダーの関係会社などから紹介料などとしてキックバックをもらい、補助金込みの自己負担額が実質無料になったり、負担額以上の利益を得ていたりした。また、不正とは断言できないが、他に88件(計2億5352万円)のキックバックと同様の事例も判明。サ協が事業効果を把握していない分などを含めた問題の金額は計9億5648万円に上る。

◆手続き担った事務局、立ち入り調査一度も行わず

 不正を認定された15ベンダーに対しては、サ協が今年7月、支援事業者登録を取り消していた。これら問題のベンダーが支援した事業は他にも1930件余(計約57億円)あり、サ協は自主返還手続きをするよう促している。  一方、検査院は、不正の疑いがある事実を把握しながら、サ協が企業やベンダーに立ち入り調査を一度も行わなかったことを指摘し、監督体制の整備を求めた。サ協を巡っては、コロナ禍に、国から委託された持続化給付金の支給事務の大半を電通に再委託し、国会で問題となった。(高田みのり) 

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