第一生命保険と清水建設は21日、東京・京橋で木造の賃貸オフィスビルの建設現場を公開した。柱やはりに計約1000立方メートルの木材を使い、2025年6月末の完成を目指す。構造材に木を取り入れたオフィスでは高さ約56メートルと完成時に国内最高となる。木のデザインと環境配慮を訴え、テナントの確保を狙う。
ビルは地上12階、地下2階で延べ床面積が約1万6000平方メートル。天井やはりなどの内装の大部分にスギやカラマツなどの木材を採用した。製造時に大量の二酸化炭素(CO2)が発生する鉄を減らし、同規模の鉄骨造のビルと比べて地上の構造体の建設に伴うCO2の排出量を約2割削減する。
木は生育時に空気中のCO2を吸収し、炭素を固定しているとみなせる。ビルに使う木材のCO2吸収量は、建物敷地約1300平方メートルの約17倍の広さのスギ人工林が蓄積するCO2量に相当する。
清水建設は耐火性能が求められるはりや耐震性能を高める壁に木材を取り入れた製品を開発した。業務施設設計部の内藤純設計長は「働き手のウェルビーイング(心身の健康や幸福)とサステナビリティーを両立する」と意気込む。
ビルは東京駅から徒歩圏内にあり、木材を取り入れた外観が大通りの交差点に面する。第一生命の不動産部の松永崇不動産開発課長は「テナントだけでなく京橋を訪れる人にも木造ビルに親しんでもらいたい」と語る。
木材の活用により建築コストが上がるものの、第一生命は木材活用などの環境配慮によって将来の収益力が他のオフィスビルより高くなると判断し、投資判断の基準となる最低利回りのハードルを下げて建設計画に乗り出した。既に一部のテナントが決まっている。
林野庁によると、植林から50年以上経過した人工林は全体の6割を超す。治水や防災の観点からも森林を更新する必要性が高まっており、高層ビルなど都市での大規模な木材活用が重要性を増している。東京駅周辺では三井不動産や東京海上ホールディングスなどが相次ぎ木造超高層ビルの建設計画を進めている。
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