ラガルドECB総裁は今後について「データ次第」として明言を避けた(12日の理事会後の記者会見、独フランクフルト)=ロイター

欧州中央銀行(ECB)が12日の理事会で追加の利下げを決定した。インフレが想定どおりに減速していることを理由に挙げた。

ドイツをはじめ、ユーロ圏内の景気には下振れの不安がくすぶる。景気にも目配りする今回の判断は妥当だろう。景気と物価を両にらみしつつ、慎重かつ柔軟な政策運営に努める必要がある。

今回の理事会では代表的な政策金利である中銀預金金利の水準を0.25%引き下げ、3.5%とすると決めた。6月に4年9カ月ぶりの利下げに踏みきり、7月の前回会合では据え置いていた。

ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、今後の政策金利について「低下方向なのは明らか」と述べつつも「引き続きデータ次第。不確実性に満ちた状況では当然だ」と指摘し、明言を避けた。

ECBはスタッフの最新見通しで今年と来年の食料品とエネルギーを除くベースのインフレ率を小幅に上方修正した。まだ物価の安定に確信を持てる状況ではない。

一方で景気回復の鈍さに対処する必要は増しつつある。スタッフ見通しでは今年から3年間の成長率を0.1ポイントずつ引き下げた。ユーロ圏の実質域内総生産(GDP)は4〜6月期の改定値で前期比0.2%増にとどまり、とくにドイツはマイナス成長に沈んだ。

ECBは当面、景気と物価のはざまで難しい政策運営を迫られる。欧州経済の停滞は技術革新の遅れなど構造問題の影響も大きい。移民問題や物価高の生活苦により加盟国内で国民の分断が進むなか、経済の底上げは欧州連合(EU)全体で取り組むべき課題だ。

執行機関の欧州委員会は、ECB前総裁でイタリア前首相のドラギ氏がまとめた競争力強化に向けた報告書を公表した。米国と中国に対抗すべくデジタルや環境技術、防衛分野で巨額の追加投資をうたうが、財政面の課題も多い。

域内の経済や財政の格差に配慮しながら、いかに民間の投資を巻き込んで経済復活への手を打つか。各国の協調が問われる。

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