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 「廃棄物を価値あるモノにしていくのがミッション」。これまでは大半が飼料や肥料となっていた食品廃棄物をさまざまな素材に変える東大発ベンチャー「fabula(ファーブラ)」(大田区)。東京大生産技術研究所で環境負荷の高いコンクリートの代替素材を研究していた町田紘太社長(32)が食品廃棄物の可能性に目を付けたのが始まりだ。

廃棄物が自然な形で素材として循環する社会を目指す町田紘太社長=目黒区の東京大生産技術研究所で

◆曲げ強度、コンクリートの4倍にも

 割れたコメを使った皿、コーヒーの抽出カスやカット工場から出るハクサイの外葉を使ったタイルなど、食品廃棄物の色や質感がそのまま製品のデザインになる。ハクサイで作った素材は、コンクリートの4倍の曲げ強度があるという。  「廃棄物の中でも食品廃棄物は量が多いが、あまり使えていない」と話す町田さん。大学の卒業研究で食品廃棄物を粉末にして熱圧縮する技術を開発すると、その半年後の2021年、地元・横浜市の小中学校時代の友人と起業した。

◆食品廃棄物由来の建材を商品化へ

 現在は、食品メーカーのノベルティーやオフィスビルの意匠材などの受注が多い。今後は、建築基準法の純不燃材料の認定を取得し、食品廃棄物由来の建材を売り出す計画だ。生産を請け負うのは、同じ大田区の町工場。この先、全国で製造委託先の企業を増やし、各地でごみを製品化して消費する循環を目指す。  研究発表の授業で地球温暖化について調べた体験が、社会課題に向き合う生き方の基礎を作った。目標は「『サステナブルだから』ではない理由」で選ばれる商品の開発だ。「持続的にごみを使っていくためには、製品そのものに価値が必要」。当たり前にごみが素材に活用される社会を目指している。(白山泉) 

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