台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場(7月、熊本県菊陽町)

九州フィナンシャルグループ(FG)は5日、台湾積体電路製造(TSMC)の進出などによる熊本県内の経済波及効果について、10年間で11兆2000億円規模にのぼるとの試算を発表した。2023年8月の前回試算より1.6倍に拡大した。TSMCが熊本第2工場の建設を決めた影響などを織り込み、10兆円の大台を超える規模に膨らんだ。

熊本へ新たに進出・投資する企業数も171社と前回調査の約2倍に引き上げた。従来はソニーグループなど国内大手の設備投資に関連した企業の進出需要が目立っていた。TSMCが24年2月に熊本第2工場の建設を発表したことで、県外のほか台湾など海外から関連するサプライヤーの進出がより活発になると見込む。

九州FGは22年9月、半導体関連の経済波及効果が10年で約4兆3000億円にのぼると試算した。その後23年8月に数値を6兆9000億円規模に上方修正していた。今回の調査見直しによって、経済効果は約2年で2.6倍に上振れしたことになる。

九州FGの笠原慶久社長(肥後銀行頭取)は「県内企業がサプライチェーン(供給網)に入るほど経済効果は大きくなる」と強調した。熊本県はTSMCの熊本第3工場の誘致にも意欲をみせており、5日には菊陽町で新たな工業団地の整備に向けた調査が始まることも明らかになった。熊本第3工場が実現すれば経済効果はさらに膨らむ見通しだ。

熊本県の域内総生産(GRP)に対する10年間累計の押し上げ効果も、従来の3兆4000億円から5兆6000億円に上方修正した。九州FGによると熊本県のGRPは21年時点で6兆4000億円だが、26年ごろには7兆円台に達する可能性があるという。

半導体産業の集積効果を説明する九州FGの笠原社長(5日、熊本市)

半導体産業の集積で大きな経済効果が期待される一方、熊本では都市圏の渋滞悪化や地下水への悪影響などが懸念されている。笠原社長は「こうしたことが現実の生産に悪影響を与えるなら経済効果は減殺される。工夫しながら乗り越えなければならない課題だ」と指摘した。

調査は肥後銀系のシンクタンク、地方経済総合研究所(熊本市)がまとめた。岡山大学の中村良平特命教授が監修した。

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