インタビューに応じる山形銀行の佐藤頭取(山形市)

山形銀行は2027年3月期を最終年度とする3カ年の長期経営計画を実行中だ。24年3月期までの3年間で広域型営業体制への移行を軸とする「変革」に挑み、一定の成果を得た。「いの一番に相談され、かつ頼りにされる銀行をつくることに専心努力する」と語る佐藤英司頭取に、地域と金融機関双方の持続性を高める戦略を聞いた。

――26年4月に創立130年の節目を迎えます。そうしたなかで山形銀がめざす姿をわかりやすく表現すると、どんな言い回しになりますか。

「地域の顧客から真っ先に相談を持ちかけられ、かつ頼られる銀行であり続けることだ。行内では『いちばんに頼られる存在』と表現している。『相談したら、解決策が必ず見つかる』『山形銀へ話を持っていかないとダメだな』とより多くの顧客に言ってもらえるよう、さらに努力を積み重ねる」

――「トランスフォーム(変革)」を掲げた前長計で、営業体制を大胆に変えました。

「県内11地区で、営業担当者と事業性融資業務を『ブロック統括店』に集約した。フルバンキングを手がける店舗が減った半面、様々な営業ノウハウを行員同士が共有し、積み上げやすくなった」

――経営効率も上がりましたか。

「取り組みの過程で県内の有人店舗を15減らした。リストラ効果はもちろんあるが、主眼は人材育成とコンサルティング力の向上だ。顧客からは『担当者の訪問頻度が上がった』『より明確かつ充実した提案を得られるようになった』との声が増えており、確かな手応えを感じている」

――営業面での山形銀の強みは。

「製造業を軸とする資金需要へのきめ細かな対応だ。山形県工業技術センターOBの採用などを通じ、補助金申請支援などのノウハウを積み上げてきた。技術に基づいた事業性評価も独自に実施している。補助金に加えて新たな資金が必要になった場合も、融資に取り組みやすい」

――現長計で特に力を入れることは何ですか。

「地方公共団体向けコンサルは一つの目玉だ。地域を元気にするというベクトルは市町村も地銀も同じであり、業務効率化など様々な提案に力を入れている」

――27年3月期を24年3月期と比べた場合、預金と貸出金のいずれも増やし、預貸率(預金を貸出金に回す比率)も高める計画です。

「新型コロナウイルス禍をきっかけに、新たな事業に取り組みたいという相談を受けることが増えている。第二創業を含め、そうした動きを後押しすることが大事だ」

――単体の不良債権比率は24年3月末で1.04%と、県内3行で最も低い水準です。そうしたなか、新産業創出にはどのように目配りしていますか。

「県内各地に新産業を興す取り組みを10年以上重ねてきた。県北西部の鶴岡市にある慶応義塾大学先端生命科学研究所を中核とするバイオクラスター形成などだ」

「同研究所発スタートアップで人工タンパク質素材を手がけるSpiberや、まちづくり会社のSHONAI(旧ヤマガタデザイン)などを後押ししてきた。日本や世界を相手に独自の価値観で戦える企業を今後も育てたい」

――グループ内に全額出資の地域商社や投資専門会社を持っています。再生可能エネルギーなどの分野で銀行業高度化等会社を増やす考えはありますか。

「現時点で具体的な計画はないが、事業を通じて地域経済を活気づけることは必要だ。いろいろと研究・検討していきたい」

――「貯蓄から投資へ」の流れを受け、顧客の資産形成力向上のために証券会社と協業する地銀が目立ちます。

「一定の関心はもちろんあるが、話が具体的に進んでいるわけではない」

(聞き手は松尾哲司、今井秀和)

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