三井住友フィナンシャルグループ(FG)がM&A(合併・買収)といった投資銀行ビジネスの強化を急いでいる。米独立系投資銀行のジェフリーズ・ファイナンシャル・グループへの出資比率を引き上げた。三菱UFJFGが投資銀ビジネスで先行しており、挽回へ次々に手を打っている。
出資比率を4.5%から10.9%に引き上げ
出資比率を当初の4.5%から10.9%に引き上げた。ジェフリーズが13日までに発表した。 10%を超えたこともあり、同社の取締役に三井住友FGの中島達社長が12日付で就任した。
両社は2021年7月に資本業務提携を結び、クロスボーダーM&Aの助言業務などで連携を深めてきた。FG傘下の銀行や証券会社も連携に加わり、株式・債券の引受業務(ECM、DCM)を含め23年度に100件弱の案件で協力が実現した。
提携関係は23年以降、矢継ぎ早に強めてきた。主に米国での①投資非適格企業向けビジネス②ヘルスケア③日本企業関連のクロスボーダーM&A――の3分野に限られていた提携は23年に米投資適格企業などに拡大した。
「ジェフリーズと組んだ海外投資銀行のビジネスモデルを確立していく」。三井住友FGの幹部はこう強調する。
三井住友FGは米国の投資銀事業をジェフリーズを軸に展開することを決め、欧州・中東・アフリカやカナダなどへと協業の対象も広げた。今後、アジア地域を対象に加えることも視野に入れている。
三井住友FGは「両社の強みを生かした戦略を検討している」とコメントした。
三井住友FGは海外証券業務の業務純益について、26年3月期に23年3月期比2倍の490億円を目指している。
三井住友FGはこれまでジェフリーズに対し議決権を持たない優先株を取得し、25年までに持ち分を最大15%に引き上げる計画を公表して、段階的に株式の取得を進めてきた。15%以上の出資が実現すれば、ジェフリーズを持ち分法適用会社にすることも視野に入る。
モルガンへの出資で三菱UFJが投資銀業務で先行
矢継ぎ早に講じる強化策の背景にはクロスボーダーの投資銀業務で出遅れているとの危機感がある。
三菱UFJFGは08年のリーマン・ショックで信用不安に陥った米投資銀大手のモルガン・スタンレーの優先株を引き受けて資本業務提携した。約23%出資しており、関係は15年に及ぶ。
モルガンがM&A助言や株式引き受け、三菱UFJが融資分野に特化しながら協力して稼ぐ収益モデルをつくった。
みずほFGも投資銀業務の強化を目指して23年12月に米投資銀行グリーンヒルを完全子会社化した。
23年の世界の投資銀行の手数料リーグテーブルでは米欧勢が上位を占めるなか、みずほとして初めてトップ10に入った。成長に向けて注力する分野の一つとして、米国を含むグローバルの投資銀ビジネスを位置づけている。
三井住友FGの投資銀行ビジネスを直接担うSMBC日興証券は、旧4大証券の流れをくみ、国内の事業基盤は他のメガバンクと比べ見劣りしない。証券業務を通じて海外で稼ぐ形をどう示せるかが長年の課題となっていた。
米連邦準備理事会(FRB)の利下げが今後本格化すれば、一時的に収益が落ち込んでいた投資銀ビジネスも復調が予想される。提携拡大はその流れにそったものといえる。
もっともジェフリーズの出資比率の引き上げは議決権の生じない優先株を通じたもので、協力関係をどこまで深められるかは見通せない面がある。三井住友FGにとって、世界各地で協業する案件を増やし、提携の果実を示すことが重要になっている。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。