帝国データバンク静岡支店によると、2024年5月時点の静岡県内企業の対ドルの想定為替レートは平均142円14銭だった。23年4月調査の130円73銭に比べ11円41銭の大幅安で、全国平均(140円88銭)と比べ1円26円安い水準となった。足元の為替レートは日銀の追加利上げもあり円高基調で150円前後となっており、同支店は依然収益悪化リスクがあるとする。
県内企業で事業として直接または間接的に「輸出」を行っている企業の想定レートは141円72銭、「輸入」を行っている企業は141円95銭と大きな差はなかった。一方、為替レートの影響が大きい、「直接輸入のみ」や「直接輸出のみ」の企業はいずれも平均で147円台で、実勢に近い結果となった。
企業規模別では大企業は143円43銭、中小企業は142円95銭。中小企業のうち小規模企業では139円83銭となっており、企業規模が大きくなるほど円安を想定して事業を運営している。
想定為替レートの分布をみると、23年度調査では141円以上の企業はなかったが、今年度は半数以上の企業が141円以上を想定しており、156円を超えるレートを設定している企業も11.1%あった。
業界別にみると、不動産が150円で最も安く想定していた。卸売(145円91銭)、建設(144円71銭)が平均より安く、県内主力の製造業は141円31銭だった。最も高かったのは小売で126円50銭だった。
帝国データバンク静岡支店は「17年以降、実際の外国為替レートと想定レートに大きな差はなかったが、21年後半以降の実勢レートは想定より大幅に円安の水準が続いている」と指摘。同社のアンケートによると企業が適正と考えている為替レートは110〜120円台といい、「実勢レートとの乖離(かいり)により企業収益の悪化を招くリスクを注視する必要がある」とした。
調査期間は5月20〜31日で、調査対象は静岡県内企業781社。有効回答企業数は336社で、分析対象は想定為替レートを設定している企業65社だった。
企業も為替レートの変動に気をもむ。ヤマハの鳥羽伸和執行役員は7月31日の決算発表で「円安の方がヤマハの業績には良い」とコメントした。同社は同日、第2四半期以降の想定為替レートを1ドル=145円から150円に見直したと発表。円安が追い風となり、25年3月期の業績予想を上方修正した。
同社はドルに対して円が1円変動すると、売上高にあたる売上収益ベースで年間10億円ほどの変動要因になるとしている。鳥羽氏は今後について「急激な円高への懸念はある」と話した。ヤマハの24年3月期における楽器・音響機器ハードの地域別売上高では、海外が8割超を占める。
一方、県中部の大手小売業幹部は「利益面で言うと、円高が業績の上振れ要因になる」とみる。同社は商品の仕入れはほとんど円貨で取引しており、店頭販売価格の値下げ余地が出てくる。日銀の追加利上げの影響はすぐには出ないとしつつ「為替の行方を注視しており、当初想定より減収増益になる可能性はある」と明かす。
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