日銀本店

日銀は3日、日本経済の需要と供給力の差を示す「需給ギャップ」が2024年1〜3月にマイナス0.66%だったとの推計を発表した。人手不足で労働需給が逼迫する一方、自動車の品質不正による出荷停止で生産設備の稼働率が落ちたことが響いた。23年10〜12月も発表当初はプラス0.02%だったが、遡及修正でマイナス0.03%に変更された。

マイナス幅は22年4〜6月のマイナス0.67%以来の大きさとなり、16四半期連続で需要不足が続くことになる。ただ日銀内では「自動車が原因で、マイナス幅の拡大は一時的」との見方が強い。金融政策への影響は限定的になりそうだ。

需給ギャップは労働や設備といった潜在的な供給力と、個人消費や設備投資などを積み上げた総需要との差を示す。需要が供給を上回るプラス圏だと物価に上昇圧力が働きやすい。反対にマイナスだと物価が下がりデフレに陥りやすいとされる。

需給ギャップがマイナス幅を拡大した主な理由は自動車の品質不正による出荷停止だ。生産設備の稼働率が落ちて不足幅が拡大したとみられる。岡三証券の中山興氏は「実需が落ちたのではなく、経済の実力とは関係ない。日銀の政策判断に大きな影響はないだろう」と指摘する。

人手不足から労働需給は逼迫しているが、設備稼働率などのマイナスを補えなかった。6月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、人員が「過剰」から「不足」を引いた雇用人員判断指数(DI)はマイナスが続いた。特に大企業非製造業はマイナス39と1991年以来およそ33年ぶりの水準となった。

日銀は物価の基調を判断するうえで、消費者物価指数や期待インフレなどと並んで需給ギャップにも注目している。日銀は4月時点で「需給ギャップは振れを伴いつつも、改善傾向をたどっている」と評価していた。

日銀が試算した23年度下半期の潜在成長率はプラス0.64%と16年度上半期以来の高い伸びとなった。大和証券の岩下真理氏は「じわじわ上昇しており、中立金利の水準がより上がっている可能性がある」と評価する。

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