SECは「組織内法廷」による事業者処分ができなくなった=ロイター

【ニューヨーク=竹内弘文】米連邦最高裁判所は27日、米証券取引委員会(SEC)が証券会社など規制対象事業者に対して行政処分を下す権限を認めない判断を下した。摘発の際には事業者を相手取って裁判所で民事裁判を起こすことを義務付ける。証券業界への監督手法に一定の制約がかかる。他の連邦機関の行政処分にも影響が及ぶ可能性がある。

SECは従来、証券詐欺などの処分検討時、組織内でもうけた審問会に諮るか、連邦裁判所で民事提訴するかを選べた。「組織内法廷」に位置づけられる審問会では、SECの執行部門が検察役を担い、判決はSECあるいは行政法判事が事実認定をして判決を下す。陪審はいない。

最高裁の判決ではSECの審問会が、陪審裁判を受ける権利を保障する合衆国憲法修正第7条に反していると判断した。保守派判事6人が支持し、リベラル派判事3人が反対した。一般に保守派判事は連邦政府の権限が大きすぎると判断する傾向にある。

2013年にSECが摘発したヘッジファンド運用者の虚偽説明が今回の係争の発端となった。最高裁判決を受けて、20年にSECが下した運用者に対する罰金は無効となった。

被告らが審問会の正当性に疑義があると主張していたこともあり、SECの執行部門は直近数年は審問会経由の処分を減らして多くを民事提訴に回していた。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、審問会で審査中の案件数は18年9月に186件あったが24年3月には2件に減った。SECの詐欺摘発への直接的な影響は限られるとの見方がある。

ただ、今回の判断の影響が他の連邦機関に及ぶ可能性はある。SEC側の弁護士は「組織内法廷」の慣行が違憲となると、同様の仕組みを持つ他の連邦機関でも処分手続きができなくなると主張していた。米連邦取引委員会(FTC)や米内国歳入庁(IRS)、米環境保護局(EPA)などが含まれる。他の機関でも行政処分に対する異議申し立てが出てくる可能性がある。

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