日銀が19日公表した4月の金融政策決定会合の議事要旨によると、9人の政策委員は「経済・物価見通しやそれを巡るリスクが変化すれば、金利を動かす理由となる」との認識を共有した。円安や人手不足による物価の上振れリスクを念頭に、追加利上げに向けた地ならしを進めた。
3月の決定会合でマイナス金利政策や、国債を買い入れて長期金利を抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)などの異次元緩和策を解除した。政策金利を無担保コール翌日物金利とし、0〜0.1%程度に誘導すると決めた。
4月会合では政策金利を据え置いたものの、追加の利上げを見据えた発言が相次いだ。
ある委員は「現在の経済・物価見通しが実現するのであれば、金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」との見解を示した。別の委員は「円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にある」と発言した。
円安を巡る議論もあった。ある委員は「コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めている。物価や賃金に波及するタイムラグが短くなっている可能性がある」と述べた。「予想インフレ率の上昇に伴う物価上昇率の上振れリスクもある」との意見も出た。
円安以外にも物価の上振れリスクはある。複数の委員は「企業が来年度の賃上げも見越して、想定以上に値上げを進める可能性もある」との見方を示した。
日銀は6月の会合でも利上げを見送った。市場は7月の次回会合で日銀がどう判断するか注目している。植田和男総裁は6月18日の参院財政金融委員会で、7月の利上げについて「経済・物価情勢に関するデータや情報次第だが、場合によっては十分ありうる」と答弁した。
日銀が保有する上場投資信託(ETF)の取り扱いについて、4月会合では委員の一人が「市場動向を踏まえると、具体的な議論ができる環境になりつつある」と指摘した。
日銀は6月の会合で国債の買い入れを減らす方針を決めた。4月の会合では複数の委員が「どこかで削減の方向性を示すのが良い」との認識を示した。別の委員は「市場機能の回復を志向し買い入れを減額することが考えられる。市場の予見性を高める観点から、方向性を示すことが重要だ」と主張した。
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