カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会の冒頭で挨拶する根本直子座長(東京都千代田区)

金融庁は10日に「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」の初会合を開いた。温暖化ガスの排出枠を売買するといったカーボン・クレジット取引で日本は海外に出遅れている。課題やルール整備の必要性などを議論し、投資家保護のための透明性確保など、必要な施策を講じる。

検討会は有識者のほか、エネルギー企業や金融機関で脱炭素に携わる担当者らで構成する。座長の根本直子早稲田大学大学院教授は10日の会合で「実態がどうなっているのかを検討会で確認することが必要だ」と述べた。

カーボン・クレジットは取引に携わる事業者が多く、ルールも統一されていないため取引が複雑になっているとの指摘がある。検討会は海外での規制のあり方など幅広いテーマから課題を探る。10日の会合では3メガバンクが取り組み状況などを説明した。

カーボン・クレジット市場は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入で企業が減らした温暖化ガスの排出量などを売買できる。日本では東京証券取引所が2023年10月、国が排出量の排出削減効果を認める「J―クレジット」を取引できる市場を開設した。

10日の会合では、カーボン・クレジットを評価するクレジット認証機関の信頼性をどう確保するかが論点となった。委員の一人は「クレジットを評価する機関によって価格が変わる。評価機関の信頼性の確保が必要だ」と指摘した。

投資家が安心して取引に参加するためにも、透明性のある価格評価が重要になっている。

日本のカーボン・クレジット市場が目指すべき姿についての議論もあった。証券監督当局の国際機関である証券監督者国際機構(IOSCO)は、カーボン・クレジット市場の発展のための報告書を出している。

複数の委員からは「IOSCOのガイドラインのなかには厳しいものもある。どこまでグローバルに合わせるか。日本として目指す姿を示していくことが必要」との意見が出た。

足元のカーボン・クレジット市場は伸び悩む。東証のカーボン・クレジット市場の取引量は開設から半年余りで約30万トンにとどまる。

排出枠が国によって割り当てられているなど事情は異なるが、15年に始まった韓国の初年の取引量は570万トン、21年7月に全国取引が始まった中国は同年末までに1.7億トンを上回った。今後は市場実態を把握し優先課題を特定しながら、議論すべき論点をまとめていく方針だ。

排出量取引の制度設計そのものは経済産業省や環境省が担っているが、実際の取引の課題などを把握し、対応策を検討する。

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