ジャングルをイメージした背景に猿面を飾り付けた立体看板=福岡市博多区で2024年5月2日、本多由梨枝撮影

 SF映画シリーズ「猿の惑星」の完全新作「猿の惑星/キングダム」(ウェス・ボール監督)が10日に公開されるのを前に、福岡市博多区の映画館「ユナイテッド・シネマキャナルシティ13」8階で、今宿人形の猿面107体を飾り付けた立体看板(縦1・8メートル、横2・7メートル)が展示されている。手がけた今宿人形作家、佐藤圭比古(よしひこ)さん(43)は「一体一体の表情が異なる猿面を楽しんでほしい」と呼びかけている。展示は30日まで。

 映画は支配者が人間から猿へと移り変わった300年後の地球が舞台。若き猿「ノア」と人間の女性「ノヴァ」が手を組み、巨大な帝国(キングダム)を築くことをもくろむ冷酷な猿の独裁者「プロキシマス・シーザー」に立ち向かう。猿と人間の共存か、猿の独裁かをかけた新たな衝突の物語を描く。

制作中の映画オリジナルの猿面を持つ今宿人形作家・佐藤圭比古さん(左)と、ノアとプロキシマスのデッサン画を持つ父好昭さん=福岡市城南区で2024年5月2日午前11時20分、本多由梨枝撮影

 今宿人形は県知事指定特産民工芸品の素焼きの民俗土人形。1905年に初代大橋清助が今宿村(現同市西区)に節句人形工房「人形屋清助」を開業したことが始まり。現在は3代目を務める佐藤さんの母由美子さん(70)と父好昭さん(71)、佐藤さんの3人で、同市城南区七隈の今宿人形工房・ギャラリー「人清(にんせい)」で制作しながら伝統を守っている。

 猿面は「災いが去る(猿)」と玄関先に飾る縁起物として親しまれ、猿田彦神社(同市早良区藤崎)で実施される庚申(こうしん)祭の授与品としても知られる。

 佐藤さんは1月下旬ごろ、映画配給会社の作品の宣伝などを手がける「新通」(同市博多区)から「福岡の工芸品を生かした特別な看板を作りたい」と打診を受け、3月末から猿面の制作を始めた。佐藤さんは敵と味方の約半数ずつ計105体の猿面を制作。敵側は輪郭を細く、目や目の周りを金色にして強さや怖さ、味方側は頭やひげなどの毛並みを変えて柔らかさを表現した。好昭さんはノアとプロキシマスの2体を通常の猿面の約3倍の大きさ(縦42センチ、横23センチ)で作り、忠実に再現することを意識し、いかつい表情に仕上げた。

 2人は、映画公開を記念して東京で8日に開かれた試写会「ジャパンプレミア」で、ウェス・ボール監督に手がけた猿面を贈った。佐藤さんは「立体看板を通じて今宿人形の猿面をまず知ってほしい。博多の名物として今後も展示・宣伝していきたい」と意気込んだ。

 同ギャラリーは不定休で、詳細はインスタグラム「猿面今宿人形」または電話(090・5021・8749)へ。【本多由梨枝】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。