2025年の十二支「巳年」にちなんだ話題です。“スサノオノミコト”が、“ヤマタノオロチ”を退治したという出雲神話題材にした石見神楽の人気の演目「大蛇(おろち)」。この大蛇を演じる衣装のひとつ「蛇胴」を、身近な開運グッズに“脱皮”させた男性を取材しました。

時代を超えて愛され続ける、石見地方の伝統芸能「石見神楽」。見せ場は煙や火を吹く「大蛇」。テンポの良いお囃子と勇壮な舞が観客を魅了します。その神楽に欠かせないのが、絢爛豪華な衣装。中でも石見神楽の象徴ともいえるのが、大蛇の「蛇胴」です。
島根県浜田市の外ノ浦(とのうら)海岸…日本海を行き交った北前船が風待ちをした港でもあります。ここに工房を構えるのが、楫ヶ瀬孝さんです。

嶋村采音アナウンサー:
これは何ですか?

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
神楽の蛇胴で、模様パターンは一緒だが、色はいっぱいあるんです。

蛇胴に使われているのは地元の伝統工芸・石州和紙。楫ヶ瀬さんは、10年ほど前からこの和紙を、「カバン」や「名刺入れ」などに生まれ変わらせています。

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
30年使われると擦れたり、破れたり相当痛むんですね。でも、和紙の風合いとかが醸し出す雰囲気がやっぱりいいし。

独特の柄、そして、その風合いは唯一無二です。

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
30年使った後は廃棄だと聞いて、焼くんだったら何かを作りたいということで譲っていただけませんかと。

蛇胴は舞台で20年、練習で10年使われると、廃棄されてしまいます。現役時代、作業療法士だった楫ヶ瀬さんは、器用な手先を生かして「故郷に恩返し」をしたいと、10年前から蛇胴の再利用を始めました。

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
伝統芸能を見るだけではなく、小物に変え、自分の発想が大先輩の職人の力添えができれば嬉しいし、地元の応援ができれば嬉しいなと。

石見神楽で使われる一般的な蛇胴は、長さ18メートル。工房にあった長さ10メートルほどの蛇胴を持ってみると…。

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
そっちが背中、真ん中が一番傷がつく。

嶋村采音アナウンサー:
重たい!

全国の12の社中から譲り受けた蛇胴は、1つ1つ丁寧に解体されていきます。

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
和紙が切れても胴が続くように、6か所の紐で繋がっていて、取るのが大変!これが10個繋がるんだよね。

嶋村采音アナウンサー:
すごいですね、初めて見ましたけど。

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
開段すると、こうなります。和紙を3枚重ねで、合わせて100枚使っていて。

こうして取り出された貴重な和紙。どのように再利用するのか、実際に作品を作りながら教えてもらいました。お正月に必要な「ポチ袋」を作ります。

嶋村采音アナウンサー:
固い、思いが詰まってる感じ。味がありますね。

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
30年経ったものですので、不具合が一品ずつ当然違います。「これ何」という説明や話のきっかけにもなります。

嶋村采音アナウンサー:
同じものが無いというのは良いですね。

蛇年の2025年、楫ヶ瀬さんは、作品が「石見神楽」への関心を高めるきっかけになればと期待します。

アップサイクル三余亭・楫ヶ瀬孝さん:
蛇が“脱皮”して変身するみたいに、しっかり第2の人生をお買い求めの人と歩んでいただければ嬉しい。

地域に受け継がれてきた伝統の石見神楽。ヘビが脱皮し、成長を重ねるように、その楽しみ方も進化するかもしれません。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。