お渡り式で観客の中を進む時代行列=奈良市登大路町で、稲生陽撮影

 平安時代から続く奈良最大の祭礼「春日若宮おん祭」は17日、春日大社境内の「お旅所」に迎えた神前での芸能奉納など各種の中心行事が営まれた。奈良市中心部を時代行列が練り歩く「お渡り式」には約1000人が参加。晴れた冬空の下、色とりどりの装束が古都を彩った。【稲生陽】

 祭りは同大社の摂社・若宮神社の例祭で、今年で889回目。

 17日の祭礼の始まりは午前0時からの秘儀「遷幸(せんこう)の儀」。青い月明かりがほのかに足元を照らす中、たいまつを先頭にした神職や参拝者らが「オー、オー」と先払いの声を上げながら約1キロを歩き、若宮神社本殿からお旅所に神様を移した。続く「暁祭(あかつきさい)」では、かがり火に照らされた舞台で御巫(みかんこ)(巫女(みこ))がゆっくりと神楽を奉納。神秘的な美しさに参拝者らから感嘆のため息が上がっていた。

 約8時間に及ぶ神前での中心行事「お旅所祭」では、二つの巨大な鼉太鼓(だだいこ)(高さ6・5メートル)の前で、各種団体や崇敬者らが深夜まで猿楽や雅楽などの各種芸能を奉納。日付の変わる直前、「還幸(かんこう)の儀」で神様を若宮神社本殿に送り届けた。

「お旅所祭」で神楽を奉納する御巫ら=奈良市の春日大社で、稲生陽撮影

田楽花笠持にあふれる笑顔 記者参加

 約1000人と馬約50頭による「お渡り式」には、毎日新聞奈良支局の田辺泰裕記者(25)も2人一組の「田楽花笠持(でんがくはながさもち)」として参加。当日の田楽奉納に使う奈良人形で飾られた花笠(重さ計約7キロ)を運ぶ役で、県庁前から大社の一之鳥居まで沿道の声援を受けながら練り歩いた。

 普段あまり運動しない田辺記者は「慣れない草履で足が痛くなるし、ずっと前を向いて背筋を伸ばし続けるのも大変。でも、やってみたらすごく楽しく、当初の気恥ずかしさも吹き飛びました」と笑顔で振り返った。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。