日本酒や焼酎など日本の「伝統的酒造り」がユネスコ=国連教育科学文化機関の無形文化遺産に登録されることが決まりました。山陰の酒造関係者からも歓迎の声が上がりました。

日本時間の5日未明、南米・パラグアイで開かれたユネスコの政府間委員会で、日本酒や焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録することが決まりました。その土地の気候や風土に応じて、500年あまりに渡って発展してきた酒造り。山陰にも多くの酒蔵があり、その技術が受け継がれています。

李白酒造・田中裕一郎社長:
どういう風に注目されていくのかを楽しみにしたい。ここでもう一度注目されて、日本人の誇りとなるような文化として皆に認識して欲しい。

そのひとつ、島根県松江市の「李白酒造」。約140年の歴史を持つ老舗です。中国やアメリカなどへの輸出が出荷の約4割を占めていて、今回の無形文化遺産への登録が日本酒の良さを海外に向けて、改めてアピールするチャンスになると期待します。ただ、その一方で…。

李白酒造・田中裕一郎社長:
かなり高い。小売り価格でいうと日本の倍ぐらいで、レストランでいうと李白の4合瓶1本が125ドル。

気がかりなのは、海外での価格です。代表銘柄の「李白」、アメリカでは720ミリリットル入りの4合瓶1本が約1万9000円。国内の3倍以上です。多くの人に手にしてもらうためには、価格を抑えることが不可欠だと指摘します。

李白酒造・田中裕一郎社長:
食べるお米の価格も高騰していますが、酒米も高騰していて、輸送コストとかその先の流通コストもかかるので、根本部分で値段が上がるとその先に跳ね上がって
来るので。

資材の高騰に加え、収量の減少などにより酒米の価格は年々上昇。2024年は60キログラムあたりの価格が2023年に比べ約1600円値上がりし、販売価格も引き上げざるを得ないといいます。海外でも選んでもらえる「日本酒」になるため、国の支援を求めます。

李白酒造・田中裕一郎社長:
国としても、酒米の大事さにもう一回目を向けて頂いて、今後の酒米の政策にも良い影響があると良いなと思う。日本で飲んでもらう、同じような品質のものを世界中の人に楽しんで頂けたらと嬉しいなと思う。

一方、歓迎の声を上げたのは、酒蔵の関係者だけではありません。島根県出雲市小境町の佐香神社。古くから酒造りに携わる人たちの篤い信仰を集めています。

佐香神社・常松宏祥禰宜:
ここのお社で酒を造らせて酒盛りをしたということで、ここがお酒に由来する神社という風にみなさんにお考えいただいている。

約1300年前にまとめられた「出雲国風土記(いずものくにふどき)」には、多くの神々がこの地に集まって酒を作らせ、長い間、酒盛りを開いたと記され、「酒造り発祥の地」とも言われる神社です。祀られているのは「久斯之神(くすのかみ)」という酒造りを司る神様。毎年10月13日の例大祭では、神職らがどぶろくを作って奉納したあと、参拝客にふるまう「濁酒祭(どぶろくまつり)」も営まれる、まさに「酒造りの聖地」です。それだけに…。

佐香神社・常松宏祥禰宜:
うれしかったですね。僕としてはやっとかという思いもありましたね。

禰宜(ねぎ)の常松宏祥さん。酒を通じて、日本の文化に理解が深まるきっかけになればと、無形文化遺産の登録を歓迎しました。

佐香神社・常松宏祥禰宜:
日本の四季ある文化に生まれた、日本の誇る文化だと思っています。世界中の方々が日本にいらっしゃって、たしなんでいただけたらうれしいことだなと思います。

その土地の気候風土や歴史・伝統を映す鏡ともいえる「日本の酒」、無形文化遺産登録は「隠れた酒どころ」ともいえる山陰の酒蔵にとってもファンを広げる追い風になりそうです。

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