元銀行マンの黒川秀夫さん(75)=千葉市稲毛区=が、26日から同市でアクリル画の個展を初めて開く。チョウやカブトムシなどの昆虫をキャンバスを埋め尽くすように描いた緻密な画風が持ち味だ。絵画を習い始めたのは定年退職後で「老後の趣味として始めて、個展は目標の一つだった」と万感の思いを口にした。【小林多美子】
今回の個展開催は、約2年前、後期高齢者となる75歳の節目に向けて「これまでお世話になった人たちに『元気にやっていますよ』というメッセージを送りたい」と考えたからだという。
黒川さんは千葉県船橋市出身。京葉銀行で広報部長などを務めた。55歳の頃に妻敏江さん(享年56歳)をがんで亡くし、「老後は夫婦でゆっくり海外旅行を楽しむ」という夢はかなわなかった。
定年退職後、かねてから習いたいと思っていた絵画を始め、海外に一人旅をした際に見た風景などを描き始めた。美術団体「一陽会」の会員にもなった。小さな昆虫がキャンバスを埋める作風は、師匠で一陽会運営委員の浜田清さんの「見る人に感動を与える絵には、密度が必要」というアドバイスからだ。
約8年前、たまたま昆虫標本の絵を描いたら、子どものころに船橋市の農家だった母の実家に遊びに行き、兄と一緒に虫取りをした記憶がよみがえった。それからは、チョウやクワガタなど昆虫を作品のモチーフとすることがほとんど。特にチョウへの思い入れは強く、「チョウへの憧憬(しょうけい)の念が創作意欲を駆り立てる」という。
近年は、「大きな作品を描いてみないか」という浜田さんからの勧めもあり、1メートルを超えるサイズの創作に取り組む。初の50号(縦116・7センチ、横91センチ)の作品「甲虫ワールド」は、2017年の県展で知事賞を受賞。その後も千葉市民展や一陽展などで受賞を重ねてきた。
創作で大事にしていることは時間管理だという。出展時期などを見据え、準備する。「付け焼き刃では良い仕事はできない。先回りと計画性は銀行員時代に鍛えられた」とほほ笑む。
個展では案内を送った友人らと旧交を温めることも楽しみにしている。「最初で最後」のつもりで臨むというが、「喜寿(77歳)や傘寿(80歳)の記念に、またやりたくなるかな」と笑う。
個展は千葉市中央区弁天の「ギャラリー睦」で5月8日まで。月、木曜休館。問い合わせは同ギャラリー(043・287・2355)。
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