全国有数の花火大会として知られる秋田県大仙市の「大曲の花火」。美しさの陰にはそれをつくる「花火師」の存在がある。卓越した技術を持ち、その道の第一人者とされる職人「現代の名工」に、大仙市の花火師が選ばれた。「見る人を笑顔にしたい」という強い思いと努力の積み重ねで得た高い技術が、光の芸術を生み出している。

8月の最終土曜日に大仙市で開かれる全国花火競技大会「大曲の花火」。約1万8000発の花火が夜空を彩る。

この大会は、形にとらわれない個性あふれる花火「創造花火」が見どころの一つで、音楽との調和で会場を盛り上げる。

「花火に音楽を合わせる」という、いまや当たり前になっている演出は、大仙市の1人の花火師によって生み出された。

その花火師が今野義和さん(60)で、大仙市神宮寺の創業125年の老舗、北日本花火興業の4代目だ。

 北日本花火興業・今野義和さん:
「学生時代に花火の仕事を手伝うようになり、大曲の花火の時に現場にカセットテープを持ち込んで『この音楽を流しながら花火を上げさせてくれないか』と申し出をしたところ、『いいよ』という話になり、それからどんどんどんどん音楽と花火の世界にのめり込んでいった」

約40年前、当時大学生だった今野さんのアイデアで始まった花火と音楽の組み合わせ。これをきっかけに、音楽に合わせて打ち上げるスタイルが「創造花火」の定番として確立された。

今野さんのすごさの一つが、豊富でユニークなアイデアだ。見た人を驚かせ、笑顔にさせる花火を提供し続けることで培った高い技術が、「現代の名工」と認められた。

今野さんは「花火の世界に“笑い”というものを盛り込んだ花火大会を心がけてやってきたので、笑いのエッセンスが花火の世界にもあるということが認められてうれしい」と話す。

そんな今野さんが得意とするのは「型物花火」だ。

ネズミに、イヌに、カエルなど、夜空に浮かび上がるキャラクター。今野さんは様々な「型物」と呼ばれる花火を生み出し、多くの花火競技大会で最高賞に輝いている。

「型物花火」は火薬のバランスがとても重要で、配置や入れ具合を少しでも間違うと形が崩れてしまう。

「手元に並べたようにはいかないのが難しくもあり、うまくいったときの楽しみでもある。型物花火は空に色々な形を描く。子どもからお年寄りまでどんな表情で喜んでくれるかなと想像して作る」と語る今野さん。

花火に情熱を傾け続ける今野さんは、努力と挑戦を重ねながら、きょうも花火と向き合う。

 今野義和さん:
「365日花火を中心に動いているので、人生そのもの。音楽を使ったり、型物を使ったり、笑いを出したりする。そういう部分の“味”をもっと深めていきたいと思う。『いい味出してるな』と評価をもらえるような花火をこれからも出していきたい」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。