佐賀市富士町の市川地区に伝わる「市川の天衝舞浮立(てんつくみゃあぶりゅう)」(県重要無形民俗文化財)が19日、氏神の諏訪神社などに奉納される。三日月形の「天衝」をかぶって舞い踊る「舞人(まいびと)」は今回、足かけ15年務めた友田孝弘さん(46)から水田寿人さん(28)に交代。大役を引き受けた水田さんは緊張しながら晴れ舞台を待つ。
市川の天衝舞浮立は諏訪神社と西福寺に奉納され、五穀豊穣や平和を祈願する。舞人は高さ約2メートル、重さ約7・5キロの「天衝」をかぶり、時に地面すれすれに天衝を回す。
奉納は地区の集落の持ち回りだが、舞人は1人の青年が続ける。腰につるしたござは、舞に失敗して切腹する時に敷くためのものと伝わる厳しい役だ。
首などへの負担は大きく2023年に友田さんは「体力の限界」から引退を決意。後継者探しが始まった。市内には担い手不足から伝承が途絶えた浮流もある。「舞人に代わりはおらず、本人がその年できなければ奉納もない」(保存会の篠原博文会長)。
そんな時に今も地元に暮らし、浮流にも加わっていた水田さんに白羽の矢が立った。同年7月、自宅に友田さんらがやって来た。「その場で即答できなかった」と水田さん。別室で家族と相談し「協力してもらえるならやりたい」と応じた。
下半身のトレーニングに加え、24年8月から本格的に練習が始まった。初めてかぶった天衝は「重く、バランスが取れなかった」という。本番を前に水田さんは「形はまだまだだと思うが、まずは無事に終えるのが目標。徐々に腕を上げていきたい」と話す。
父誠さん(57)は「あの日、迷っているようだったが『お前次第だ』と声を掛けると『やる』と答えてくれた。息子が選ばれ光栄に思う」と目を細める。また、友田さんは「引き受けてくれたことで浮流を継続できる。感謝しかない。一緒に頑張っていきたい」と話す。【西脇真一】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。