戦時中に製造された「幻の貨幣」が、京都で大量に発見されました。一体、どこに眠っていたのか?
発見にいたるまでの知られざるストーリーと、気になるその“価値”を徹底取材しました。
■歯科治療の機器などを製造する会社から出てきたのは…!
「壱」の文字が刻まれ、茶色い表面には、「富士山」や「桜」が描かれています。コインのようにも見えますが、実はこれ、土でできた「幻の貨幣」とも呼ばれるものなのです。
「感謝状、『株式会社松風』殿、当時の様子を伺うことができる貴重な資料になります」
「ありがとうございます」
大阪の造幣局では10月16日、この貨幣を発見した企業に感謝状が贈られました。
今回、見つかったその数は、なんと50万枚!!
【造幣局 後藤健二理事長】「製造から80年近くたって、これだけの物が残っているということに、正直申し上げて私も驚きを禁じえませんでした」
「幻」だったはずが、一挙に50万枚も見つかるとは一体、どういうことなのか?
この世紀の大発見をした京都の企業を訪ねました。
「株式会社 松風(しょうふう)」は、歯の治療で使われる機器などを製造・販売しています。そんな会社に、なぜ「幻の貨幣」が眠っていたのか…。
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「弊社の関連会社になるんですけれども、『松風工業』という会社がございまして、そちらの方で製造していた」
「当時の社長が当時の政府に対して、『金属が不足するので、陶器でお金を作ってはどうか』といったことを進言したという記録も残っております」
■不足した金属の代わりに「陶器」を…しかし
「幻の貨幣」の歴史は、今から80年前にさかのぼります。
日本国内では戦争の影響で金属が不足し、他の材料で貨幣を作ることができないか研究されていました。そんな中で白羽の矢が立ったのが「陶器」でした。
検討の結果、京都・愛知・佐賀の3カ所で生産することに。輸出用の陶器の皿などを製造し、高い技術を誇っていた「松風工業」が京都での生産を請け負ったのです。
実際に国内では、1銭、5銭、10銭の3種類、1500万枚が製造されましたが、流通前に終戦を迎えました。
破棄することが決定したため、現存するものはほとんどなく、陶貨幣は「幻」となったはずでしたが、社内ではまことしやかに伝わる“噂”があったといいます。
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「どこか土地の中に埋まっているんじゃないかと。そういったことも噂話ではあったんですけれども、やっぱり土地を掘り返すというのはなかなかできないので」
まるで「埋蔵金伝説」のような噂話は、2023年の8月に現実のものとなります。
■「黙ってネットオークションかけたら、かなりもうかるんじゃないか(笑)」
会社が創立100周年を迎えるにあたり、古い倉庫の中で調べ物をしている時のこと。
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「奥から空き箱が出てきたと、木箱を開けてみると一銭陶貨がザクザクと出てきたという状態ですね」
Q.発見された時は驚いた?
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「そうですね。もう宝物発見みたいな状態ですね」
「これを黙って自分でネットオークションにかけたら、かなりもうかるんじゃないかなっていうのは正直、思いましたけども(笑)」
これほど貴重な50万枚ものお宝。その発見場所を案内してもらうと…。
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「ちょうど、この奥にある倉庫の中で発見されたということです」
Q.建物はもうないんですね。
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「残念ながら。今年の夏には取り壊しております」
なんと、すでに発見場所は新工場の建設に向けて取り壊されていました。とはいえ、この場所から生まれた歴史的発見。
社内で話し合い、全てを造幣局に引き渡すことにしたということですが、一体その価値はいくらになるのでしょうか。
Q.鑑定は?
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「いえ、特にしてもらっていません」
Q.価値を知りたいですか?
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「そうですね。ぜひ鑑定に出してみたいところですけど」
ということで…。
■気になる鑑定額!さらに“埋蔵金伝説”には続きが
取材班は、超貴重な「幻の貨幣」をちょっとだけお借りし、鑑定してもらうことに。その驚くべきお値段は果たして…?
【鑑定士】「買取価格としては…」
京都の企業の敷地から50万枚もの数が見つかった幻の「貨幣」。その価値は一体どれほどになるのか、鑑定してもらいました。
【なんぼや難波本店 杉本未来店長】「今まで見たことないですね。すごく珍しくて」
そして、真剣な眼差しで鑑定をスタート。
【なんぼや難波本店 杉本未来店長】「状態はすごくいいですね。結構割れてるものもあったりするので。陶貨なので個体差はあると思うんですけど、ヒビとか、欠けとかもなくて」
気になる買取価格は…50万枚で、「5000万円」です!
【なんぼや難波本店 杉本未来店長】「『なんぼや』の買取価格としては、1枚100円になりまして」
「こちらのものに関しては、二次流通の価格から算出しておりまして、その逆算をもとに(1枚)100円」
もともと1銭は、1円の100分の1の価値ですが、こちらでの買取価格は、1枚100円。これが骨董品市場の流通価格になると、1枚1000円前後で取引されていて、50万枚だとその額は「5億円」に!
その価値も衝撃的な結果となった今回の大発見。実は、この“埋蔵金”伝説には続きがあるのです。
松風工業は、今回発見された1銭陶貨以外に、「10銭陶貨」も製造していました。市場では、過去1枚2万円ほどで取引されていたこともある、超貴重な品物です。
Q.10銭は出てきていない?
【株式会社松風 岩崎滋文総務部長】「10銭陶貨はまだ見つかっていないということですから、ひょっとしたらどこかに埋まっているのかもしれないですね」
近い将来、さらなる「幻の貨幣」大発見の一報が入るかもしれません。
(関西テレビ「newsランナー」2024年10月16日)
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