父が残した作品を手にする玉垣元庸さん=神戸市で、山本真也撮影

 兵庫や大阪で水墨画教室を約40年間主宰し、4月に97歳で亡くなった神戸市長田区の玉垣真一(雅号・玉垣華聖)さんの初の個展が8日から中央区中山手通1のダイヤモンドギャラリーで開かれる。92歳で教室を閉じてからも、通っていたデイサービス施設で高齢者仲間に教えるなど筆を持ち続け、「100歳になったら記念展をやろう」が晩年の目標だった。残した作品を多くの人に見てほしいと家族の手で実現することになった。【山本真也】

 家族によると、玉垣さんは長田区で食品販売の店を営む傍ら、40歳ごろから師匠について水墨画を本格的に学んだ。元々、手先が器用ですぐに上達。コンクールなどで賞を取るようになり、50代で自らの水墨画グループ「聖雲会」を創設した。

 最盛期には神戸市や加古川市、堺市など5、6カ所で教室を営んだ。用意した絵を生徒に示すのではなく、花鳥風月などその日の画題を目の前でさっと描いて手本を見せるのが玉垣さんの指導スタイルだった。

晩年も筆放さず

水墨画教室で生徒を教えていたころの玉垣真一さん=家族提供

 80代になって2人暮らしの妻が病気がちになり、家事や看病が忙しくなったため、教室の数を少しずつ減らし、92歳で一線を退いた。ただ、筆は放さず、デイサービス施設でも自主的に利用者に水墨画を教えていた。そんな姿を見て服飾業を営む長男の元庸(もとのぶ)さん(63)は「100歳で記念の個展を開こう」と励ましていたという。

 しかし、100歳まであと2年半に迫った4月に突然、体調が悪化して亡くなった。教室を主宰していた時は生徒の作品展は毎年開いていたが、自身の個展は一度も開いたことがなかった。元庸さんは「自分のことは後回しにして、家族や生徒さんに尽くした父だった。もっと早く個展を開いてあげればよかった」と後悔した。

 それでも「残された作品を多くの人が見てくれたら父も喜ぶに違いない」と考え、2人の姉と協力して個展を開催することにした。元庸さんは「間に合わなかったけど最後の親孝行のつもりです」と話す。

 花や虎などを描いた代表作二十数点を展示。13日まで。入場無料。同ギャラリー(078・331・1214)。

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