3月20日と21日に韓国ソウルで行われたMLB開幕戦の数日前に同地で記者会見に応じた大谷とベッツ(右)。結婚の話題に大谷が笑顔になる一幕も CHUNG SUNG-JUN/GETTY IMAGES

<同じドジャースの強打者、ムーキー・ベッツから大谷はどう見える? チームメイトに見せる素顔から野球の実力まで、独占インタビューで聞く>

2018年にはMVPと首位打者にも輝いたロサンゼルス・ドジャースのムーキー・ベッツ(31)。同じ強打者のチームメイトから、大谷翔平(30)はどう見えるのか。仲間たちに見せる、大谷の素顔とは? 20年MVPのフレディ・フリーマン(35)と大谷と共にドジャースの「MVPトリオ」といわれるベッツに、ロサンゼルス在住のMLBライター・青池奈津子が聞いた。

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──大谷選手と今年初めてチームメイトとして過ごして、第一印象から変わったことや新たな発見はあるか。


特にないかな。普通の男だよ。僕はもともと先入観を持たないタイプなのと、自分も日々やることがいろいろあって忙しいから、他の選手について細かいことは気にしないほう。

僕に分かるのは、クラブハウスやダグアウトで一緒に過ごしているショウは本当に普通の男だということ。野球をやる仲間の1人で、普通に家に帰るし、家族を愛しているし、僕らと同じことをする。ただ、彼にはスーパーパワーがあって、それを(フィールドで)よく見せている。

──スーパーパワーとは、大谷選手の野球は超人的だということか。

あれはスーパーパワーとしか言いようがない。彼を動物に例えるならライオンかな。ジャングルの王者のように君臨するもの。なんでもできるのが彼だ。

──大谷選手がライオンだったら、自分はどんな動物だと思う?

僕は鳥になりたいね。飛び回って、ロサンゼルスの渋滞に悩まされることなく好きなところに行きたい。でも野球をやっているときはチーターになりたいかな。脚が速かったら何でもできる気がするんだ。

──ベッツ選手は20年2月にボストン・レッドソックスからドジャースにトレードされ、同年7月にドジャースと12年という長期契約を結んだ。当時ドジャースがそれほどの長期契約をするのは珍しく話題になったが、そこまでコミットできるドジャースはどんな球団なのか。

ドジャースは勝ちたい球団。彼らは毎日、毎年勝ちたくて努力している。僕もそう。ドジャース以上にそれがうまい球団、勝つ機会をくれる球団はない。

──大谷選手も常に「勝ちたい」という言葉を口にしている。

ああ、僕らはいつだって勝つためにやっているからね。皆一緒さ。

──今日も大谷選手と何か話している姿を見たが、彼とチームメイトでいることは楽しい?

そうだね。彼とプレーするのはとても楽しいよ。

──先ほど大谷選手は普通の男と話していたが、さすがに突然の結婚報告には驚いた?

うーん、実際のところ、どっちでもいいんだよね。僕は彼が彼らしくいてくれればいいなとしか思っていない。


ただ、恐らく世界中が驚いたんじゃない? そういう意味で、ちょっとつらいなと思うのが、彼が結婚するのも大変、誰かに邪魔されずに外を歩くこともできない立場にあるということ。

自由がないのはしんどい。僕はそれをとても気の毒に思う。そこまで彼がすごいということだから、幸せなことなんだけど。

──ドジャース移籍で大谷選手の知名度は確実に上がった。

彼はスーパーに買い物にも行けない。ドッグパークに犬を連れて行きたくてもできない。どこへ行っても人が追跡してくるだろう? ただ愛犬や妻や両親と散歩したいだけかもしれないのに、それができない。

僕らにとっては普通のこと、当たり前だから感謝するのを忘れてしまっているようなことが彼にはできないんだ。仕方のないことではあるけど、かなりつらいことだと僕は思う。

──以前は、犬の散歩やスーパーへ買い出しにも行っていたようだが。

今はもう無理だよね。メディアが毎日、彼の家の前を張っているだろうから、行ける場所がない。世界で最高の選手でいることの宿命なんだろうけどさ。

──宿命といえば、最近はニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手が追いかける本塁打記録と大谷選手が追う50-50のどちらのほうがすごいかという議論が熱く繰り広げられているが、ベッツ選手はどう感じている?(本記事の取材は9月上旬。現地時間9月30日時点で本塁打はジャッジ58本、大谷54本)

みんなもう比較するのはやめて、2人の偉大さに感謝すべきだと思うね。だんだん当たり前みたいになってしまっているけど、僕らが置かれている状況はすごいんだ。すごいことをやっている選手が2人もいる。

ジャッジが(22年に自身が達成したシーズン62本のアメリカンリーグ記録を抜く)63号を打ったらめちゃくちゃかっこいい。ショウが50-50を達成したらめちゃくちゃかっこいい。どちらのほうがすごいとかない。

2人の偉業は本当に素晴らしいものだから、いいとか悪いとか比較をするよりも楽しんだほうがいい。だって、どうやったら63号が50-50よりすごいと言えるんだい? 逆もしかり。全く違うじゃないか。同じなのは両方とも素晴らしい偉業で、僕は両方とも達成してほしいと願っている。

そして僕は自分の子供たちに、パパは目の前でその瞬間を見られたよって伝えたい。だから見方を変えて、それぞれができる最高を存分に発揮してもらうような空間をつくっていこう。

2人ともアメージング。どちらも、誰も超えたことのない領域に行こうとしている。その瞬間を見ることができて、どちらも友達と呼べることが幸せだよ。

──大谷選手は来年には二刀流を復活予定だ。投手にも戻った場合、ドジャースにもたらす正と負の効果は何だと思うか。

負の効果は何一つないね。いいことしかない。(投手として)チームを助けることになるし、(打者として)今やっていることも引き続きやるんだから。彼が、ショウヘイ・オオタニとしての本領を発揮することになる。


──以前、ベッツ選手は自分の番組で大谷選手が二刀流で復活する日を休みにしたほうがいいと言っていた。

ああ、彼が初めて投げる日は、国民の休日にしたほうがいいね。間違いなく。世界中が彼の試合を見るだろうから。

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