世界中で紛争、戦争がやまない。子どもたちや市民が犠牲になる姿を見るたびに胸が苦しくなる。兵士たちは、攻撃する相手が倒すべき「敵」だと認識しても、それが「人」とは認識していない。

 時は江戸時代前期。幕府より独占的にアイヌ民族との交易を認められていた松前藩の藩士が主人公。序盤、アイヌの人々を蔑称の「蝦夷(えぞ)」と呼ぶ主人公を、兄が「アイヌはアイヌ語で『人』という意味だ。アイヌと呼べ」とたしなめる場面がある。

 主人公は兄を殺され、あだ討ちの途中、大けがを負ってアイヌに助けられる。「人」としてのアイヌと暮らすうち、自然の中で、自然と共に「ただそこに生きている」姿に触れ、少しずつ意識が変わっていく。しかしその裏で、松前藩とアイヌの争いは激化していく。主人公は決してアイヌを救うヒーローではなかった。それでも、最後に主人公が下した決断が今も続く争いを止める一つの方法だと信じたい。(DX戦略局・屋良朝輝)

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