伝統河内音頭継承者で音頭取りの河内家菊水丸さん=東京都新宿区の吉本興業で、油井雅和撮影

 大阪の夏といえば河内音頭。伝統河内音頭継承者で音頭取りの河内家菊水丸さんは、この夏も盆踊りツアーで大忙し。来年には大きな夢が実現しそうだ。それは大阪・関西万博への出演。菊水丸さんに聞いた。【聞き手・油井雅和】

 ――新型コロナウイルス禍も落ち着いて、河内音頭はもちろん、盆踊りが各地で盛り上がりましたね。

 ◆「盆踊りがうるさい」とかで「無音盆踊り」や、踊る方もイヤホンつけて、なんてこともあったようですが、東日本大震災以降、コミュニティーの大切さが見直されて、長らくやっていなかった盆踊りが復活したという例もあるようです。

 ――万博への出演依頼が来たそうですが、子どものころに大阪万博に行った菊水丸さんにとっては昔からの夢だったそうですね。

 ◆吉本(興業)に入って、インタビューで「将来の夢は?」と聞かれ、「万博で音頭を歌うことです」と、17歳で答えているんですよ。それからずっと言い続けてきたことなんです。

伝統河内音頭継承者で音頭取りの河内家菊水丸さん=東京都新宿区の吉本興業で、油井雅和撮影

 万博だからといって意識することなく、いつもどおりのことをやりたい。大阪の人が見ると「見慣れてる河内音頭やな」だろうけれど、世界の人からは「こんなけったいな音楽が日本にあるのか」と思ってもらえるかもしれません。

 今、万博に対して賛否両論ある世の中ですけど、たとえば、五輪への批判は、出ている選手にとっては別問題ですよね。それと同じで、おこがましいけれど、私にとって万博に出ることは子どものころからの夢なんです。大阪万博から55年たって、万博で歌えることを重く受け止めて楽しみたいです。

 ――一昨年の東京公演「通し読み 河内十人斬り」がCD3枚組みで発売されました。

 ◆クラシックの会場でしたので、太鼓など響きすぎやったかなと思いましたが、ちょうどよくて録音には適した会場でした。「河内十人斬り」は、実際に起きた事件が題材なので、大阪だと演じる場所に気をつかったりするんですが、東京で、しかもあれだけの尺(長さ)をやれる機会はないと思っていたので、一つの形として残せた、それは意義深いです。

 ――河内音頭の心地よさは、一度聞いてもらえればわかると思うのですが。

 ◆土着のダンスミュージックだと僕らは言ってますが、珍しい芸能であるというのは確かですね。「民謡ですか」とよく聞かれますが、盆踊り唄ですから民謡のジャンルにも入るでしょうけど、河内音頭は長さがその日その日で変わっていくんです。

 今回のCDは、今まで部分的にしかなかった「河内十人斬り」を通しで、しかもスタジオ録音ではなく一発限りのライブ盤ですからね。ライブ盤は僕も初めてでした。僕はビデオもない時代に育ってますから、なんでも残せる今の時代はうらやましいなあと思います。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。