ハリポタファンが知らなかったアメリカ版の変更 Brian McGowan-Unsplash
<『ハリー・ポッター』第1巻が発売されてから約30年。今もなお、新たな発見がファンの間で話題を呼んでいる。その一つが、アメリカ版とイギリス版の小さな違いだ>
世界的ブームを巻き起こした小説「ハリー・ポッター」シリーズ第1巻が発売されてからほぼ30年。いまだにファンが知らなかった些細な事実が存在していた。
シリーズ初版が発売された1997年以来、イギリス版とアメリカ版には違いがあった。最も有名なのはタイトルの違いだ。
第1巻「ハリー・ポッターと賢者の石」のイギリス版は「Harry Potter and the Philosopher's Stone」。だがアメリカ版は「Sorcerer's Stone」に変更された。ほかにもアメリカの読者に親しんでもらうための変更はシリーズ作品を通じて多数ある。例えば「ジャンパー」は「セーター」に、「シャーベットレモン」は「レモンドロップ」になった。
ところがネット上で、ある変更をめぐって大きな騒ぎが持ち上がった。原因は、アメリカの読者の方が、イギリスの読者よりも与えられた情報が少なかったことにある。
アメリカ版から消えた詳細
論争に火を付けたのはコンテンツクリエーターのミカイラ(@magicbymikaila)。TikTokに投稿した8月5日の動画の中で、アメリカ版が変更されていたせいで、ハリポタクイズの答えを間違えたと訴えた。この動画の再生数は3万2000回を超えている。
ミカイラはちょっとしたイベントで、ハリポタ登場人物のシリウス・ブラックが使った魔法銀行グリンゴッツの金庫番号は? と質問されたという。
小説を数えきれないほど読み返した大のハリポタファンとして、この問いに答えはないとミカイラは確信した。イギリス版を読むまでは。
スカラスティック社が出版したアメリカ版のブラックの言葉はこうだった。「私は君の名を使った。だが彼らには、私自身のグリンゴッツ金庫から金貨を取り出せと言った」
一方、ブルームズベリー社が出版したイギリス版のブラックはこう言っていた。「私は君の名を使った。だが彼らには、グリンゴッツ711番金庫から金貨を取り出せと言った。私自身の金庫だ」
アメリカ版に加えられた変更の多くは(例えば「スイーツ」が「キャンディ」になるなど)、一般的なイギリスのフレーズに関してアメリカの読者の理解を助ける目的だったと解釈されている。だが金庫番号が完全に抹消された理由は、ミカイラにも、コメントを寄せた何百人ものユーザーにも分からなかった。
「ちょっと待って、どういうこと? 唯一の違いは『Sorcerer's Stone』という呼び方だけだと思ってた」というコメントや、「わざとだと思う。イギリス人はいつも些末なことで優位に立ちたがるから」という冗談も書き込まれている。
ブラックの言葉が変更された理由についてはさまざまな憶測が飛び交う中で、特に多かったのがセブンイレブン原因説だった。711という番号は冗談のネタになったかもしれないと推測する声や、子供が近所の店でブラックの金庫にアクセスしようとする可能性があったという声もある。
作者のJ・K・ローリングはかつて自分の著書に加えられた変更に言及し、ハリー・ポッターの出版が最初に認められた後、出版社からリクエストされたと語っていた。
アメリカ版についてローリングは、イギリス版が出版された翌年の1998年に出版する時点でSorcerer's Stoneのタイトルを使うことを承諾した。
ローリングはさらに、本名のジョアンではなく頭文字のJKを使ったのも出版社の提案だったと自身のウェブサイトで打ち明けている。JKの方が男子受けがいいという理由だった。
数十年を経てハリー・ポッター・シリーズは点字やラテン語も含めて80以上の言語に翻訳され、歴史に残るベストセラー本となった。
本誌はTikTokを通じて@MagicbyMikailaに連絡を取り、ブルームズベリーとスカラスティックにも電子メールでコメントを求めている。
(翻訳:鈴木聖子)
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