「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」に出演している船越英一郎(左)と阪田マリン 写真はいずれも撮影:中村嘉昭

壊れても捨てることができず、押し入れや物置に眠っている「昭和のアイテム」や、名優やスポーツ選手たちの「昭和の記憶」を令和に再生するノスタルジックリアル番組「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」(BS12 トゥエルビ)。番組MCを務める俳優の船越英一郎と、2000年生まれながら昭和カルチャーをこよなく愛する「ネオ昭和」アーティストの阪田マリンが、番組と昭和の魅力を熱く語る。

念ずれば通ずるって本当

――番組の企画を聞いたときの感想

船越 NHKで「ごごナマ」(2017~21年)という番組をやっていたとき、昭和に使われていたモノを写真で紹介し、これは何だろうと視聴者を巻き込んでクイズをしたら非常に好評でした。残念ながら番組は終わってしまいましたが、そのDNAを継ぐことをやりたいと思っていたら、この番組のオファーが来て。念ずれば通ずるって本当だなって思いました。

阪田 私は中学2年の時におばあちゃんの家でレコードを聴いてからずっと昭和好きで。でもカラオケで昭和の歌を歌うと盛り下がっちゃうから、周りには隠していたんです(笑)。でもSNSで昭和を広めることを発信し続けていたら注目してもらえて、この番組の依頼が来たときは、「好きなものを好きと言い続けて良かった」って思いました。

タイムスリップしたようなMC

――番組でV振り(VTRに切り替える)のときに2人で指をくるくる回すポーズが印象的

船越 昔は「回転!」って言ったり、いろいろなV振りがあったじゃないですか。それへのオマージュと言いますかね。昭和を見ていただくんなら、我々も昭和のMCになりましょうよと僕が提案したんです。タイムスリップしているようなMCが2人いるってことで。この番組のマリンちゃんの衣装は、実はほとんど昭和の服なんだよね。

阪田 全部私物です。古着屋さんでゲットしたものを今風にアレンジしつつコーデして。1着500円くらいで手に入るので、家には70着とか怖いくらいあります。おばあちゃんからもらったものをリメークしたり。可愛いです。

日常の昭和を語るなぎら健壱

――印象に残っている回は

船越 銀座で昭和の花柳界を再生する旅が印象深いですね。作家の岩下尚史さんと人間国宝の竹本葵太夫さんという、昭和の銀座を知り尽くした語り部たちの掛け合いはかけがえのないものじゃないですか。僕にとっても、懐かしさとともにトリビアがたくさんあって、学びの多い回でしたね。あと、なぎら健壱さんの散歩のコーナーも好きで、ずっと続けてほしい。大上段じゃない、日常の昭和を語ってくれるからね。

阪田 喫茶店のジュークボックスを再生した回も感動しました。直ったジュークボックスを見て感激している旦那さんを見ている奥さんの表情が…。

船越 ただただ、ジュークボックスを見るお2人の顔だけを映し続けているんですよ。こんな番組、日本中探してもないよ。

阪田 それで泣けちゃうんですよね。余分なものを入れないから。

船越 こんなの直らないだろうというものを直す職人さんを、見つけて来るスタッフもすごい。さっき聞いたんだけど、番組を見た方があの修理会社にジュークボックスを持ち込まれたらしいですよ。しかも3人の方が。それだけいろんな方がこの番組を見て思いを持ってくださったというのがうれしいですね。

もどかしかったことがロマンに

――改めて感じる昭和の魅力

船越 僕らの世代は、昭和からどうしても離れられない。現代のテクノロジーの中に生きていても、昭和と地続きの中で暮らしている気がします。昭和にこそ、日本人の心やカルチャーの原風景があるような気がするんですよね。だから昭和を忘れたくないし、忘れてほしくない。

阪田 昭和って、いい意味で不完全なんですよね。不完全な美しさっていうか。

船越 あの頃は完全だと思ってたけどなあ。

阪田 たとえば今は音楽を聴くにしても、いつでもアプリでワンタッチで聴ける。でもレコードだと、ターンテーブルに置いて針を落として少ししてから始まる。その間があることによって音楽がより一層美しく聴こえる気がするんです。

船越 なるほどね。若い人たちは僕らがもどかしかったことの中にロマンみたいなことを感じてくれている。そうすると、自分らが生きてきた時代がもう一度輝いて見えてきますよね。だからこの2人は良いコンビですよ。

阪田 やったぁー。

船越 だって彼女は、年齢を考えれば僕の3分の1ですよ。その若い方が、僕ら世代のものを受け止めて掘り起こそうとしてくれているんだからうれしいですよね。

――番組の今後について

船越 「昭和と再生」というくくりはあるものの、思い出やアイテム、味など、毎回モチーフがバラバラなのが、実はこの番組のいいところなのかなって思い始めています。再生する手腕は相当レベルが高いし、まだまだいろんな可能性を感じます。古くて直せないものをお持ちの方、どしどしご応募ください…って、この言い方も昭和かな(笑)。

ふなこし・えいいちろう>1960年7月21日生まれ、神奈川県出身。82年にドラマ「父の恋人」でデビュー。近年の出演作に「警視庁考察一課」「テイオーの長い休日」「赤ひげ」シリーズなどがある。

さかた・まりん>2000年12月22日生まれ、大阪府出身。昭和に今のテイストを盛り込んだ「ネオ昭和」をSNSで発信。23年には「ザ・ブラックキャンディーズ」としてCDもリリースした。

「船越英一郎の昭和再生ファクトリー」

BS12 トゥエルビ 毎週(木) 午後9:00~9:55

(おとなのデジタルTVナビ)

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