開幕した第75回毎日書道展=東京都港区の国立新美術館で2024年7月10日午後2時7分、渡部直樹撮影

 「第75回毎日書道展」の東京展を開催中です。漢字、かな、近代詩文書、大字書、篆刻(てんこく)、刻字、前衛書の7部門にわたる日本最大の総合書展です。会場は、東京・六本木の国立新美術館(入賞作品や役員、会友作品、8月4日まで)です。公募部門の最高賞である毎日賞の作品の中から、本展の各部審査副部長が選んだ「私の推す毎日賞」を紹介します。

松井萌芳「夏山の」

<かなⅠ類>松井萌芳「夏山の」(東京都世田谷区)

 墨量をおさえた書き出しの絶妙な構成に作品への強い意欲を感じた。横展開の王道である「起承転結」を見事に表現し、潤筆の柔軟な線質、渇筆の力みのない筆圧の変化が功を奏し、作品を美しく魅力的に仕上げた。筆者の今後に期待。(評・伊藤柳静)

駒林燈舟「沫雪の」

<かなⅡ類>駒林燈舟「沫雪の」(埼玉県東松山市)

 沫雪(あわゆき)が舞うような無音の書き出しに気持ちがひき込まれた。前半の墨継ぎ部では一転して線条が多くを語り出し、2首目は行間に変化を持たせながら小ぶりに収め、前半の大きな余白と対比させている。万葉の世界を情緒豊かに表現。(評・原田弘琴)

山内松吾「海は一瞬を繋ぎながら」

<近代詩文書>山内松吾「海は一瞬を繋ぎながら」(宮城県気仙沼市)

 東北在住の作者にとって東日本大震災は忘却し得ぬ「一瞬」。しかし「海」に対する心象は決して恐れや怒りではない。海はすべてを回帰させる。玉什(ぎょくじゅう)に込めた思いを昇華させ、紙面にものの見事に表現し観者をさまざまな想像にいざなう。(評・近藤北濤)

三木奈美「笑」

<前衛書>三木奈美「笑」(神戸市)

 オーソドックスなスタイルでありながら上部からテンポよく打つ点はきらきら輝くまるで童子の瞳。とりわけ横線の揺るぎなき強じん力は全体の緊張感を表出し、曲線からの空間を美しく醸し出している。凜(りん)と立つ姿は伸び代多く今後に期待する一作。(評・松本燁之)

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