「第75回毎日書道展」の東京展を開催中です。漢字、かな、近代詩文書、大字書、篆刻(てんこく)、刻字、前衛書の7部門にわたる日本最大規模の書の祭典です。会場は、東京・六本木の国立新美術館(入賞作品や役員、会友作品、8月4日まで)と上野の東京都美術館(東京展の入選作品など、7月18日から24日まで)の2会場です。公募部門の最高賞である毎日賞の作品の中から、本展の各部審査副部長が選んだ「私の推す毎日賞」を2回にわたり解説します。
<漢字Ⅰ類>謝名堂薫紅「金雞巌僧室」(沖縄県うるま市)
先が利く細めの筆の弾力を利用し、律動を加味しながら書き上げた運筆が見事。躍動している文字は、造形に少しも狂いがない。この字数で繁雑に見えないのは、墨の潤滑を効果的に配し、行を立て、行間を生かしたからで、完璧に近い作といえる。非凡な作者である。
(評・栗崎浩一路)
<漢字Ⅱ類>草野珠光「雙戯」(札幌市)
「雙戯」とは、秦代の画像磚(せん)に見られる雙龍が戯れる姿をいう。雄渾(ゆうこん)な筆致から繰り出される線条が紙面を圧倒し、大字の快作となった。豊かな墨量と渇筆が奥行きと明るさを生み、各字に生彩感が横溢(おういつ)している。
(評・加藤裕)
<大字書>小倉揮代「背」(愛媛県伊予市)
見るものを圧倒する筋肉質な線の塊。それを支える深みのある墨色。そして美しく輝く白。鍛錬に鍛錬を重ねたからこそ成しえる造形である。親父(おやじ)の背を見て子は育つとはよく言ったものだ。偉大な背である。
(評・松崎礼文)
<篆刻>笹倉淳「飛出蘆華」(大分県日田市)
漢印式の四字制(均布法)を使い力強い線質を組み合わせ直筆と曲筆を巧みに表現した作品。特に「華」の主体である中央線は白を利かせ、太く構成しているため、周囲の細かな線が一段と綺麗(きれい)に仕上がり力作が誕生した。
(評・越坂久雄)
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