難しく思われがちな埋蔵文化財の魅力を若者を含め多くの人に伝えようと、文化庁が動画シリーズ「いせきへ行こう!」を展開している。2021年4月から、ユーチューブの「文化庁 bunkachannel」内で約40本を配信。文化財調査官や全国の文化財専門職員らがゆるーく、そして時に熱っぽく、遺跡や出土品の見どころを語っている。
「いせきへ行こう!」で今月公開した最新動画は、開催中の巡回展「発掘された日本列島2024」(列島展)を解説する内容だ。列島展の企画を担当した長直信文化財調査官が進行役となり、別の調査官らと展示されている遺跡の見どころを説明する。列島展が30年を迎えたことのやり取りがあった場面では、ファンファーレの効果音が鳴り、画面にピンク色の文字で「祝30年」の文字と紙吹雪が舞い、埋蔵文化財を担当する5人の調査官のイラストが登場する凝りようだ。
「いせきへ行こう!」は文化財そのものの魅力とともに、文化財活用の取り組みを発信することで、地域住民に埋蔵文化財の価値を再認識してもらう狙いがある。そのためには専門知識のない人にも分かりやすく伝える工夫が必要だ。これまで公開した動画では、調査官が全国の文化財専門職員とオンラインで語り合ったり、実際に遺跡を訪ねたりしてきた。また、ニュース番組風に構成したり、効果音やテロップを多用したり、かわいい動物の映像を挟み込むなど試行錯誤の様子がうかがえる。
再生回数は過去には約15万回とヒットした動画もあったが、最近は1000~2000回程度のものが多く、より幅広い人々に見てもらうには課題も多いようだ。今年4月に公開した「番外編 文化庁×Z世代座談会」は、「いせきへ行こう!」の編集を担当する近江俊秀主任文化財調査官と芝康次郎文化財調査官が、8人の若者と古墳の魅力を語り合ったり、これまでの動画の感想を聞いたりする内容だった。
若者からは、雰囲気について「堅くて暗い」、また再生時間が長いことに「隙間(すきま)時間に見られる長さがいい」「今のままだと社会の先生の授業を受けている感覚、寝ちゃう」といったダメだしが相次いだ。一方、遺跡を直接訪ねた動画では、「探検心をくすぐられた」「見ていてわくわくした」との感想が聞かれ、「古墳作ってみた!みたいな企画がいい」「ここが面白くて、というのをお酒を飲みながらやってほしい」といったアイデアも出た。
近江さんは動画の最後で「いろんなこと教えていただきました。もう私58ですけれど、進歩し続ける58歳でありたい。よりよい『いせきへ行こう!』を作っていきたい」と意気込み、若者から拍手を受けていた。【高島博之】
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