韓国で30年の芸歴を持ち、初監督作の『ハント』も好評を博したイ STUART C. WILSON/GETTY IMAGES

<『スター・ウォーズ:アコライト』での大役抜擢に「辞退も頭をよぎった」という俳優のイ・ジョンジェ。英語での演技は「舌がもげても頑張る」と語る──(インタビュー)>

韓国の俳優イ・ジョンジェ(51)はドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』(ディズニープラスで配信中)の大役に抜擢され──舌の痛みに悩まされた。

『イカゲーム』の実力派がハリウッド進出作となる『アコライト』で演じるのは、ジェダイ・マスターのソル。英語での演技に悪戦苦闘し、一時は食事もできなくなったという。韓国の首都ソウルにいるイに、本誌は舞台裏を聞いた。


「毎日朝から晩まで英語のセリフを特訓しているうちに舌の先が歯にこすれて痛くなり、物が食べられなくなった」と、イは振り返る。「英語と韓国語では舌の動きが全く違う。英語を話すと舌が歯に当たるんだ」

英語に苦労することは予想していたと、彼は言う。「気を付けなければならないことが山ほどあった。英語の発音もアクセントもセリフを口にするときの間の取り方も、全てが難しかった。言語コーチが2人がかりで、セリフをきちんと言えるように厳しく指導してくれた」

イは韓国で30年のキャリアを誇る大スターだが、世界にその名を知らしめたのは2021年の『イカゲーム』だった。

命懸けのサバイバルゲームを描いたネットフリックスのこのドラマで、イはエミー賞や全米映画俳優組合賞に輝いた。待望の第2シーズンは今年後半に配信が予定され、現在も撮影が続いている。

『アコライト』のレスリー・ヘッドランド監督も『イカゲーム』でイに注目し、ソル役に抜擢した。

『アコライト』の舞台は、スカイウォーカー家が中心の映画シリーズより100年ほど前のハイ・リパブリック時代。ソルはジェダイの中でも位の高いジェダイ・マスターだ。

ある日平和なはずの銀河でジェダイが殺害され、捜査に当たったソルは危険な戦士メイ(アマンドラ・ステンバーグ)と対峙することになる。

出演を打診される前から、イはヘッドランドの存在を知っていた。彼女が製作総指揮を務めたネットフリックスの『ロシアン・ドール:謎のタイムループ』のファンだったのだ。

ヘッドランドがスピンオフを手がけると聞いて、「これまでとは違う『スター・ウォーズ』が見られそうだ」と期待したという。

先輩ジェダイを参考に

ヘッドランドから送られてきた企画書にはざっくりとした粗筋しか書かれておらず、イの役どころも明らかではなかった。

「『イカゲーム』でちょっと名が知られた程度の役者に来るのは脇役だろうと予想していた。まさかジェダイ・マスターのソルを任されるなんて、思いもしなかった」

ジェダイを演じる『アコライト』のセットでヘッドランド監督と ©2024 LUCASFILM LTD. & TM. ALL RIGHTS RESERVED.

ハリウッドで初めて出演する作品が『スター・ウォーズ』のスピンオフで、しかも主役級のキャラクターを演じるとなれば、かなり荷が重い。辞退は考えなかったのかと尋ねると、イはきまり悪そうにほほ笑んだ。「正直に言うと、(辞退が)頭をよぎった」

オファーを承諾した後で届いた脚本を読んで初めて、イは責任の大きさを理解した。「どれだけ準備を重ねても演じ切れないんじゃないかと、不安になった。悩みすぎて白髪が増えたよ」


もともと『スター・ウォーズ』が好きだったイは、映画を全て見直した。ジェダイのキャラクターを「丁寧に」観察して俳優たちの演技を分析し、ソルのキャラクターづくりに役立てたという。

歴代ジェダイの中で特に注目したのが、リーアム・ニーソンが演じたクワイ=ガン・ジンだった。「クワイ=ガン・ジンを解剖し、ニーソンの演技からアイデアをもらおうとした」と、イは語る。

『アコライト』では登場人物の多くが二面性を秘めているが、ソルの強みと弱みはどこにあるのだろう。

「ソルには温かみを感じさせるシーンがたくさんある。ほかのジェダイよりも温かみを見せられるのが、彼の強みだろう。人間味を強調したいとも思ったが、ジェダイとしてどの程度人間味を出していいのか、そのあんばいを見極めるのが難しかった」

初登場のシーンも大きな試練だった。視聴者には一目で、なるほど彼はジェダイだと納得してもらわなければならない。「視聴者が初めて僕の姿を目にし僕の声を聞くシーンで、ジェダイになり切っていなければならなかった」

今年は『アコライト』のほか、『イカゲーム』の第2シーズンにも熱い期待が寄せられている。

「ストーリーがぐっと面白くなった」と、イは新シーズンに自信をのぞかせる。「強烈なキャラクターが新登場するし、第1シーズンよりも楽しんでもらえるはずだよ」

イが演じる主人公ギフンは復讐を遂げられるのか。イは「彼の変化もシーズン2の見どころ」だと言い、それ以上は明かせないと述べた。

舌がもげても頑張る

俳優として国内外で華やかな受賞歴を誇るだけでなく、監督に初挑戦したスパイアクション『ハント』は2022年のカンヌ国際映画祭で7分間のスタンディングオベーションを浴びた。

順風満帆のイはかつて本誌のインタビューで、ハリウッドに行くならトッド・フィリップス監督や俳優ホアキン・フェニックスと仕事がしたいと語った。『アコライト』の配信開始以来、ハリウッドから仕事のオファーは来たのか。


「来ていない」と、イは謙虚に笑って答えた。「英語で演技ができるのか、みんな『アコライト』を見て判断しようとしているんじゃないかな。ドラマが完結するまでハリウッドの反応は分からない。運命的な作品と出会えることを祈るしかない」

また超大作のオファーが来たら? 「どんな仕事が来るのか、僕には分からない。でもこれはというチャンスが来たら、やるしかない。たとえ(英語の特訓で)舌がもげても頑張るよ」

The Acolyte | Official Trailer | Disney+(英語版予告編)

『スター・ウォーズ:アコライト』|本予告 日本語吹替版|Disney+ (ディズニープラス)

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