上から時計回りに、安藤瞳、小暮智美、尾身美詞=濱田元子撮影

 等身大の女性たちの多様な生きざまを、書き下ろし作品や海外翻訳戯曲を通して体現してきた「On7(オンナナ)」。歴史ある新劇5劇団に所属する俳優7人で作る演劇ユニットだ。「miniOn7」と銘打った番外公演で、久しぶりに活動する。選んだ作品は、関西を拠点に活躍し、東京でも注目を集める劇作家、竹田モモコ(ばぶれるりぐる)の「二十一時、宝来館」。田村孝裕(ONEOR8)を演出に迎え、心の機微に触れてくるリアルな会話劇に挑む。

 メンバーは小暮智美、尾身美詞、安藤瞳(以上、青年座)、渋谷はるか(文学座)、保亜美(俳優座)、吉田久美(演劇集団円)、宮山知衣(プロダクション・エコー)。始動した11年前は20代後半だった7人も、それぞれ舞台経験、人生経験を重ねてきた。

 今回は、集まれる小暮、尾身、安藤、宮山の4人が出演する。「ユニットを作ったころとは、また違う岐路に立っている。母親になったにせよ、例えば親の介護があったにせよ、芝居をOn7でやりたいなと思う時に一緒にやれる柔軟なユニットでありたい」と安藤。本公演ではなく、「公演をやりたいメンバーが集まった時にできる形態」とminiOn7が生まれた経緯を説明する。

 「On7は7人なので第7回公演まではやろうねって始めているので、そこにカウントすると違うねって気持ちになる」と尾身。小暮も「番外公演ばっかりやっているから、(本公演が)増えないねーって(笑)。たとえ50代になったとしても、全員でいつかできたらいいねって思っています」。

 今作は2020年に関西演劇祭ベスト脚本賞を受賞した作品。舞台は5年ぶりの同窓会の夜、取り壊しが決まっているホテル「宝来館」の休憩所だ。そこで、地元でクリーニング店を営むちぐさ、大阪で派遣社員をしている沙英、地元でデキ婚をして1児の母のゆかりの同級生3人の会話が、それぞれの過去と現在、心情をあぶり出していく。その3人を見つめるのが「灰皿」だ。高知・土佐清水の方言「幡多弁」で繰り広げられる。

 「最初に読んだ時に、On7にぴったりじゃんって思った。こんなに女性をカラフルに描いて、さらに、面白いやりとりの会話がある。モモコさんとOn7が出合ったら楽しいなあと思った」と尾身。実は安藤と小暮も読んでいて、思いが重なった。

 女性3人の配役はダブルキャストとなるため、2役を演じることになる人も。灰皿役は、ゲストの青山勝(道学先生)と矢部太郎(カラテカ)、そして宮山のトリプルとなる。

 「女性たちのシーソーゲームがものすごく面白い。『同窓会あるある』じゃないですけど、それぞれコンプレックスとかネガティブなところ隠しながら、この場では幸せをアピールしながら探り合って会話する。この流れが絶妙。笑えるだけじゃなくて、この人たち痛いなというのが見えてくるといいな。田村さんの演出は、思いっきり笑わせていて、人間の悲しみがすごくにじんでいるといつも思うので、そういうところまで出るといいな」と尾身。

 安藤は「人と人との距離感って、すごく難しい。私がすごくそうだった。距離の詰め方だったり、入り方だったり、その距離の部分をたくみに書いてらっしゃる。人によって違うし、縮め方も違うし、不器用な人たちの、不器用さがいとおしいなあって思う。コロナもあって、人と人との距離感が難しくなっている時に、こういうお芝居で元気になってもらいたい。『明日あの子と話してみよう』っていうくらいに、なってもいいかな」と話す。

 小暮も「意地悪で、いい人たちが出てくるのがいいなと思う。私は普段、いい人でありたいと頑張っちゃうけど、意地悪な気持ちは私にもあるし、やっぱり違うよなって、毎日軌道修正しているような感覚がある。それのミニマムな視点、言語化もされないような視点をモモコさんがちりばめている。灰皿の視点が出ることで、人間界のちっちゃいスケールが広がる。その視点に立てばなんでもないことなんだな、と私自身も救われています」と意気込みを語る。

 今回、サポートに回る吉田は「On7も40代になり、キレイキレイじゃない女性たち、そういう部分がちゃんと出せる年齢になってきたかなと、作品もそうですし、みんなの芝居を見ててもそう感じる。20代、30代のキラキラしたものから、いろいろ経てきた今のOn7を見に来てほしい」。

 公演は6月26~30日、東京・荻窪のオメガ東京。問い合わせは070・6470・9599、メールはon7onnana@yahoo.co.jpへ。【濱田元子】

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