[沖展 2024 75th OKITEN EXHIBITION]

 沖縄県南風原町宮城出身で神奈川県に住む澤岻盛勇さん(80)は今回の沖展で3年連続正賞を受賞し、準会員に推挙された。「生まれ島の伝統ある沖展で評価されてうれしい。気合が入る」。開幕した3月23日からほぼ1日置きに会場へ足を運ぶ。美術から工芸まで多彩な作品を味わい、「刺激を受ける」と目を輝かせた。(社会部・吉田伸)

貧しかった幼少期

 6人きょうだいの5番目。絵を描くのが好きだったが、家は貧しく自宅と学校、畑を往復する毎日。「自分の集落のことしか知りません」と振り返る。中学を卒業した1959年、パスポートを手に神奈川へ集団就職。酒屋の住み込み店員やトラック運転手になり、必死に働いた。

片道3時間かけて美大へ

 22歳で神奈川県庁の技術職に採用され、働きながら夜間の定時制高校に通った。その後「絵を学びたい」と武蔵野美術短大の通信教育部の門をたたく。電車で片道3時間の通学も、苦にならなかったという。上司や同僚の理解を得て年休も使って通い、美術の教員免許も取得した。

70代後半で沖展に挑戦

 60歳で退職し、改めて武蔵野美大に編入した。62歳で卒業制作に臨み、公募展にも積極的に出品した。2021年、購読していた本紙の電子新聞で、沖展の広告を見かけた。翌年は復帰50年。「節目の年。沖展に挑戦してみようか」と意欲が湧いた。

 自宅に設けたアトリエの一角で、さびた楽器がたたずむさまを油彩で描いた。緻密な写実力に加え、穏やかな時の流れを感じさせる表現が評価され、一般応募最高の沖展賞を受賞した。「沖展は出品者が多く、入選するのも大変。絵を描いていて本当に良かった」

「大変刺激になる」

 受賞を機に、県内の画家との交流が始まった。沖展の時期に合わせて帰省し、県立博物館・美術館やギャラリーなどを巡る。「皆さんから示唆に富んだ批評をもらい、大変刺激になる。画学生に戻った気持ち。若返っています」と声を弾ませた。

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