水曜10時のドラマ「ブルーモーメント」に消防士役で出演している俳優・水上恒司さんが5月、長崎の母校を凱旋。話題のドラマや映画に次々と出演し、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍中の水上さんの芝居の原点は、長崎での高校時代にまでさかのぼる。(サムネイル写真提供:創成館高校)

俳優・水上恒司の礎を築いた高校時代

6年前に長崎・創成館高校を卒業した水上さん。今回空港で出迎えたのは野球部の監督とコーチだった。

母校での単独インタビューに応じた水上さん
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水上恒司さん:
緊張感がすごい。ちょっと生きて帰れるかなという感じで…当時ではありえないことで、有難いこと

小学生からプロ野球選手を夢見て野球漬けの毎日。甲子園を目指して、長崎県諫早市にある創成館高校に入学した。ここでの経験が俳優・水上恒司の土台を作ったと言っても過言ではない。

水上恒司さん:
社会に出たら自分のことだけ考えていいわけでない。そんな当たり前のことをこの学校での生活で教えてもらえたことが大きい

在校生が大歓迎でお出迎え

野球部ではキャッチャーで副キャプテンだった水上さん。創成館高校野球部の歴代キャッチャーは、寮生活では「監督の洗濯係」に任命されるという。目配り気配りが必要で、全体を俯瞰(ふかん)して見る力が求められるキャッチャー。監督の洗い物を洗濯し、畳むという何気ない作業も、「気配りがないとできない」と稙田監督は話す。私生活がしっかりできて初めて野球でも生かされる。水上さんは常に謙虚で真面目に取り組んでいたという。

高校時代を振り返る水上さん

水上恒司さん:
生まれ育った土地も違えば色んな価値観を持った120人が集まり、一緒に共同生活をしていた。色んな衝突や価値観の違いでギャップを感じるわけだが、変に目立つわけではなくて周りと共存しながら自分の価値を見出したり、生きる術や生き方を見つけていくことの大事さは創成館時代に学んだ

演劇の県大会で「役者になりたい」

懐かしのグランウンドにも足を運び、後輩たちに激励の言葉を送った。

懐かしのグラウンドでキャッチボール(写真提供:創成館高校)

水上恒司さん:
多少無理してでも、このひと夏を一生懸命どれだけ必死にやれるか。野球を辞めた身として、かなりの期間にどういう風な姿勢で野球と向き合ったかというのが今にかなり生きていると思う

後輩たちと記念撮影(写真提供:創成館高校)

高校時代は持ち前のルックスでとにかく目立った。学校紹介のパンフレットは毎年モデルに抜擢された。

高校2年生の時

野球部の引退後に思わぬ転機が訪れた。3年の秋、教師の誘いで演劇部に入部。初めて舞台に立つと、演じることへの興味が芽生え始めた。

高校3年生の時の演劇の一幕(一番左が水上さん)(写真提供:創成館高校)

演劇の県大会で『役者になりたい』と思った。「その前日に野球をするために大学受験を受けていたのでまさかの急展開だった」というエピソードを明かした。

2023年、福原遥さんとダブル主演を務めた映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」では特攻隊員の役を演じた。若い人に「戦争」を知ろうと思うきっかけの作品になってもらえたらと思って演じていたと話す。

水上恒司さん:
長崎にいつ何時何分に原爆が落ちたとか広島にいつ落ちたとか、終戦記念日はいつなのかとか、知らない若者もいっぱいいて、その若者たちが大人になっていく未来はちょっとぞっとする。僕としては毎年その時間とかその日に何かしらのSNSで発信したり、忘れずに生きていくことしかできないので、少しでも風化するスピードを遅くすることを意識してやるしかない。平和な今のうちに

風化を嘆く前に自分にもできることがある、それが芝居にもつながっていると話す。

「山Pと呼んでます」

今や映画やドラマに引っ張りだこの水上さん。デビューからわずか5年で第47回日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞した。

現在は、フジテレビ系列で毎週水曜日午後10時から放送しているドラマ「ブルーモーメント」に消防士の園部優吾役で出演している。主演の山下智久さんとの共演は興奮して「わーっとなった」と話す。

「山P」と呼ぶのに時間がかかった

水上恒司さん:
現場では『山P』と呼んでいるが、そう呼べるまでに時間がかかった。

(Q ちなみに山Pは水上さんのことはなんと呼んでいるのか?)
水上さん(笑)

セリフは暗記マニアみたいな感じで数話先まで頭に入れている。お風呂に入っている時に全部言えるまで上がらない!とか、着地点を決めてやっている

ドラマでは自然災害から人命を守るために活動する特別災害対策本部=SDMの一員として過酷な現場で救助活動にあたっている。

水上恒司さん:
いきなり1、2話から雪山でのロケで10日間ほど缶詰めだった。缶詰め状態で同じ時間を過ごすというのはやはり絆が深まり、今までにない結束力を感じている。過酷ロケをキャストやスタッフと乗り越えた事実が「このチームなら頑張れる」という空気感につながっている

ドラマを見ている人を直接救える立場ではないが、エンターテインメントとして少しでも水曜10時の1時間だけでも辛いことや日常を忘れて「あすも頑張ろう」と思ってもらい、あすを生きる活力になったらいいなと思っている

夢を叶えるよりも大事なこと

5月12日で25歳になった水上さん。「夢を叶えるよりも大事なことがある」と熱く語った。

どれだけ志を持って生きていけるか

水上恒司さん:
芝居をやっていく上で役者にとって一番大事なものは何か考えた時に、どれだけ志を持って生きていけるかだったり、どれだけ必死に生きているかだと思う。
僕はプロ野球選手になることが夢だったが、それは叶えられなかった。でも途中で挫折した野球を通して得たものが、今の役者につながっている。成功した経験も大事だが、失敗した経験がその人にとって優しくなれるかどうかの大きなポイントになる。絶対に無駄なことはない。努力はすぐに結果が出るものではない。我慢強さが大事になってくる

「ブルーモーメント」は消防隊や医療班などのチームで災害から人命を守る

水曜10時のドラマ「ブルーモーメント」は気象学をもとに、消防隊や医療班など色んなチームと掛け合わさって災害から人命を守っていく。第4話の災害は「台風」。「優吾がいてくれたらいいな」そう思ってもらえるレスキュー隊を目指していると話す水上さん。志を持った優吾の活躍から目が離せない。

(テレビ長崎)

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