オープン直後から多くの人でにぎわう「ほんまる」=東京都千代田区で4月27日、三浦研吾撮影

 直木賞作家の今村翔吾さんが4月、東京・神保町にシェア型書店をオープンさせた。これまでも大阪や佐賀で書店を運営してきた今村さんが、なぜ「本の街」に新たに書店をオープンしたのだろうか。

 「どうぞ!」。司会のかけ声と共に、参加者が一斉にテープカットをすると、大きな拍手と歓声が起こった。4月27日、本の聖地・神保町の一角にシェア型書店「ほんまる」が誕生した。今村さんは「出版業界をあきらめないための反撃の本丸として、『ほんまる』が神保町にできたことを喜びます。今日ここから、出版の灯を絶やさないための反撃に出ます。歴史の一ページになるよう頑張っていきます」とあいさつした。

 シェア型書店とは、本屋の棚を「棚主」が借りて、おすすめの本などを販売する新たな書店の形だ。比較的小規模なサイズ・低費用で棚を借りることができたり、他の棚主や本に関わる人たちとのつながりを作れたりする利点があり、近年少しずつ広がっている。

 今村さんがシェア型書店に着目した背景には、書店減少の課題がある。日本出版インフラセンターの調べによると、書店の総店舗数は今年3月時点で1万918店。10年前に比べて約4700店減った。また、出版文化産業振興財団の調査によれば、書店ゼロの自治体は今年3月時点で全体の27・7%に及んでいる。

 今村さんが「地域の企業や個人がシェア型書店に参加することで、本屋に対するサポートになるのではないか」と考え、開店の検討を始めたのは1年ほど前のこと。全国にシェア型書店を広げていく構想を掲げ、本の聖地・神保町を始まりの地に選んだ。【松原由佳】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。