3月に行われた大相撲春場所で110年ぶりに新入幕優勝を果たした東前頭6枚目・尊富士(25)=伊勢ケ浜部屋=が、12日に初日を迎える夏場所(東京・両国国技館)を休場する。新入幕優勝の快挙は終盤での右足の負傷を押してつかんだものだ。角界のホープとの呼び声は高く、長い相撲人生を考えれば当然の決断といえる。
尊富士は春場所での相撲を「気力だけで取った」と明かす。それほど満身創痍(そうい)だった。場所終盤に右足首付近の靱帯(じんたい)を痛め、夏場所に向けた稽古(けいこ)は十分に積めず、リハビリを続けていた。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)は9日の報道陣による代表取材に「四股も満足には踏めない」と苦しい現状を語った。
「休む」という選択は重要な意味を持つ。痛めた箇所は、右足首付近の靱帯。春場所で積み上げた白星は、出足の良さからの速攻相撲が下支えした。他の親方衆も「下がるのを見たことがない」と評する立ち合いの鋭さを取り戻すためにも、土台となる足首をしっかり治さなければ「自分の相撲」は取れない。
夏場所を全休すれば、次の名古屋場所での十両転落は避けられない。尊富士は2場所連続優勝への意欲ものぞかせていたというが、伊勢ケ浜親方は「こんな状態で出ても無理。しっかり治さないと」と話す。歓喜もつかの間、いきなり試練を迎えたが、周囲の意見を聞き入れて下した決断は無駄にはならない。【岩壁峻】
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