東京ドームで6日に行われるボクシングの世界タイトルマッチで、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥選手(31)=大橋=に、世界ボクシング評議会(WBC)1位のルイス・ネリ選手(29)=メキシコ=が挑戦する。ネリ選手はこれまで日本での世界戦で度重なるトラブルを引き起こしてきただけに、注目の一戦だ。
5日に東京都内で行われた前日計量は、1回でクリアした。リミットを500グラムも下回る54・8キロに、会場のネリ選手陣営から大歓声が起きるとともに、関係者は安堵(あんど)の表情を見せた。
山中慎介戦で2度の「トラブル」
ネリ選手が日本で初めて世界戦を行ったのは2017年8月。京都で行われたWBCバンタム級タイトルマッチで、具志堅用高さんに並ぶ日本記録の13連続防衛を目指した山中慎介選手(帝拳)に挑み、四回TKO勝ちした。しかし、事前に実施されたドーピング検査でネリ選手が陽性反応を示したことがその後、判明。WBCは同年10月に意図的な摂取の証拠がないとしてネリ選手の王座保持を認める一方で、山中選手との再戦交渉を命じた。
18年3月の再戦では、前日計量で1・3キロオーバーし、王座を剥奪された。会場の東京・両国国技館では試合前から大ブーイングが起きる中、山中選手に二回TKOで勝利を収めた。ただ、王座は空位となった一方、山中選手は引退を表明。「神の左」とも称され、具志堅さんの記録にあと一つまで迫った名チャンピオンの最後には後味の悪さが残った。
この一件で、日本ボクシングコミッション(JBC)はネリ選手の日本での無期限の活動停止処分を科した。一方、JBCが今年2月にネリ選手のライセンス申請資格回復を認めた。そのため、今回の井上選手とのタイトルマッチが実現した。
4月23日に帝拳ジムで練習を公開したネリ選手は「体調は100%。今回は暖かいので、体重を落とすのに役立っている」と減量の順調さをアピールし、ドーピング検査についても「最新の20日前を含め3回受けていずれも陰性だった」と強調していた。
井上尚弥は「ジョーダンではない」
井上選手について「過大評価されている。いい選手だと思うが、バスケットボールのマイケル・ジョーダンではない」と話すネリ選手。34年前の東京ドームでは、37戦全勝33KOという圧倒的戦績を誇っていた世界ヘビー級王者のマイク・タイソン選手(米国)が敗れる波乱が起きた。番狂わせへの自信を報道陣に問われると、ネリ選手は「皆さんが目撃するでしょう」と笑った。【武藤佳正】
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