高校男子長距離界のエース、八千代松陰(千葉)の鈴木琉胤(るい)選手(3年)はスケールの大きな選手だ。競う選手が誰であっても「先頭で走り続け、そのままゴール(フィニッシュ)する」というスタイルを貫く。
象徴的なレースが、7月の全国高校総体男子5000メートルだった。ケニア出身の留学生選手たちと終始先頭を争い、時折前にも出た。最後まで競り合った末、1位と約1秒差の2位になり、大会の日本人歴代最高記録を更新する13分39秒85をマークした。
そのルーツは小学校の校内マラソン大会にある。
「特別走ることが得意ではなかった」というが1年生の時に優勝した。すると負けず嫌いな性格で「来年も勝ちたい。誰も自分の前を走らせたくない」との思いを抱き、6年間、一度も1位を譲らなかった。先頭で走る爽快感を知った。
中学ではサッカー部に所属していたが、小学校のマラソン大会の結果を知った先輩に誘われ、陸上の大会や駅伝にも出場した。中学3年夏の全日本中学校選手権の男子3000メートルで優勝し、高校からは陸上に専念すると決めた。
高校入学当初は、サッカーの走り方の癖が抜けずに苦しんだ。練習量も増えた影響で、2年時の大半は股関節の疲労骨折で走れなかった。
しかし、転んでもただでは起きない。冷静に今の自分に必要なものを考え、実践できるのが強みだ。故障をきっかけに体のバランスや走り方の癖を修正し、腹筋と背筋の強化にも取り組んだ。復帰後も毎晩、補強トレーニングを続けたことが実り、今年の飛躍につながった。
今年正月の箱根駅伝で青山学院大の優勝に貢献した佐藤一世選手(SGホールディングス)ら箱根駅伝常連校や実業団に進む多くの選手を育ててきた八千代松陰の大橋一博監督(42)は鈴木選手について、こう絶賛する。
「ここまで能力の高い選手はなかなか出会えない。普通はスピードを出そうとすると、腕や体に力が入り体力の消耗につながってしまうが、鈴木には全くない。体はリラックスしたままなのにスピードが出せる」
同校の指導方針で、記録会などで必要以上にタイムを狙うことはせず、大事な大会で100%の力を出し切ることを重視してきた。小さくまとまらず、大きく育ってほしいからだ。
「走り始めたら誰にも負けたくない」と語る鈴木選手にとって、都大路は高校3年間の集大成となる「大事な大会」だ。必ず「先頭で」駆け抜ける。【磯貝映奈】
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