創立21年でついにJ1昇格を決めたファジアーノ岡山。資金力やスタジアムの規模、J1で戦うためには多くの課題を抱えています。クラブの歴史を引き継ぎ、その課題に立ち向かう就任1年目の森井悠社長(42)に密着しました。

12月7日のプレーオフ決勝。試合終了の笛が鳴った瞬間、森井悠社長は冷静に次を見据えていました。

(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「(Q:冷静ですね?)北川会長が泣きすぎるから…」
「めちゃくちゃ厳しい世界が次に待っているので、J2に上がった時も断トツの最下位だった。同じようなことが待ち受けている可能性が高いので、しっかり準備をしていきたい」

2004年、Jリーグ入りを目指し、特定の親会社を持たない市民クラブとして立ち上がったファジアーノ岡山。千葉県出身の森井社長が大手人材派遣会社からファジアーノに転職したのはJ2に参入した翌年の2010年、コーチだった大学の同級生からの誘いがきっかけでした。

その頃、社長を務めていたのは私財を投げうってクラブの運営会社を立ち上げた、現在のオーナー・木村正明さんです。

(2008年当時:木村正明さん)
「自分のふるさとはプロスポーツの 一つもないし、悔しい」

木村さんがJリーグの専務理事に転身した2018年、現在の北川真也会長が社長を引き継ぎました。そして2024年3月、それまでスポンサー営業やイベント運営を担っていた森井社長が就任します。

■2024年3月 社長就任会見
(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「120%の力が発揮できないとJ1にチャレンジできるほどの規模ではない。今、行っている事業をしっかり整理して、きちんと収入にできるようにしたい」

就任の打診を何度も断っていましたが、20年の歴史を背負うことを決めました。

(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「社長という立場で夢を語っていて、サッカークラブの社長の仕事は、ほぼそれなんだろうと思う。そこにいろいろな人が集まっている 。1人では何もできない」

しかし、その夢を前に、厳しい現実が突きつけられます。

サッカークラブの収入の柱となる「広告料収入」と「入場料収入」は2023年度、いずれも過去最高になりましたが、J1の平均と比べるとそれぞれ半分以下。強豪クラブと比べると文字通り桁違いの差があり、収入を高めるためにはスタジアムの規模を拡大する必要があります。

(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「今の陸上競技場も素晴らしいが、最高クラスの人気スポーツのサッカーでは専用スタジアムを作ることが重要になる」

J1を戦い抜く準備には時間がありません。プレーオフ決勝の2日前、森井社長が訪れたのは岡山市内のデニムメーカー、「アン・ドゥー」。ユニホームの背中につく大口スポンサーで中村二郎社長のもとを最初に訪問したのは岡山に来たばかりの森井社長でした。

(アン・ドゥー 中村二郎社長)
「J1になったら、すごく燃えるね」来年も引き続き応援しますので」

J1に昇格した場合のスポンサー料金の増額を打診していました。

(アン・ドゥー 中村二郎社長)
「私自身が岡山のために貢献できるかと思い今までスポンサーになってきた。引き続き、地元に貢献できるようにスポンサーをやっていきたい」

(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「来季J1だったらいくらというのを提示し、ウェアのスポンサーは継続が決まっている。思いを持って応援している人がいるというのを感じるので、改めて責任を感じる」

駅でのチラシ配りでもスタッフの最前に立つ森井社長。運命の試合を前に掲げた「全員で勝つ!」というスローガンには森井社長に託された多くの人の思いが込められています。

(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「オール岡山でしっかり戦うということが大事。多くの人と「全員で勝つ!」で戦いたい」

決勝の試合が始まる5時間前。

■スタッフミーティング
(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「スタッフやまちの人が 準備をしてくれたおかげで、ほぼ緊張することなく当日を迎えられている」
(ファジアーノ岡山 増井哲哉さん)
「来年(2025年)に向けて今年以上に観客が詰めかけてもらえるよう、勝敗と同じように ホスピタリティが大事になる」

チケットは即日完売、森井社長も広告物の設置など準備に追われます。

オーナーの木村さんの前には長い列ができ、昔から応援するサポーターの思いを受け取ります。

(ファジアーノ岡山オーナー 木村正明さん)
「3万人以上チケットの応募があったと思う。そういった人が入れるスタジアムというのを次の段階で求めていきたい。(森井社長は)すごく冷静なので、きょうもうまくチームの雰囲気を作ってきた。森井社長の色をいっぱい出して、より魅力的なクラブを作ってほしい」

■入場する観客とグータッチする森井社長

約1万5000人で赤く染まったスタジアム、ホイッスルの瞬間は冷静だった森井社長も喜びの輪に加わります。

(アン・ドゥー 中村二郎社長)
「ファジアーノのために今後も応援していきたい」

岡山がファジアーノというクラブを通じてココロヒトツニなった瞬間でした。

(ファジアーノ岡山オーナー 木村正明さん)
「来年(2025年)、ここに浦和レッズや鹿島アントラーズが来る。すごいことになる。 最高峰のJ1の舞台を県民と楽しみたい」

就任1年目が歴史的な1年となった森井社長。

(ファジアーノ岡山 森井悠社長)
「いろいろな人を巻き込んで一緒に進んできたクラブ。足りないものはたくさんあるが一つ一つ 地域と一緒に目標を立てながら、一つ一つ解決していきたい」

岡山の思いをひとつにして2025年、夢の舞台で戦います。

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