フィギュアスケート男子で冬季オリンピック2連覇を果たし、現在はプロスケーターとして活躍する羽生結弦さんが手掛けるアイスショーの全国ツアー「Echoes of Life(エコーズ・オブ・ライフ)」が7日、さいたまスーパーアリーナで開幕した。 自身が制作総指揮を担当する「ICE STORY(アイス・ストーリー)」の第3弾で、「命」や「生きる」ことの本質を問う物語を描いた。
公演後の羽生さんの主な談話は次の通り。【芳賀竜也】
「違った30代を迎えることができた」
<率直な感想は>
とうとう開幕したなっていう感じが一番強いです。本当にたくさん緊張しましたし、もちろん、すごく時間をかけて毎日毎日トレーニングも練習も積んできましたけれども、やはり本番になってみて、皆さんの前で滑ってみないと分からない、成功なのか失敗なのかみたいなところもあったので、正直とうとう始まったなっていう気持ちと、まずは初日、けがなくストーリーとして完結できて良かったなっていう気持ちでいます。
<改めて思いや狙いを>
元々、自分が生命倫理っていうものを、小さい頃からいろいろ考えたり、または大学で履修したりしていく中で、生きるということの哲学について、すごい興味を持っていました。そこからずっと自分の中でぐるぐるとしていた思考であったりとか、理論であったりとか、そういったものをまた勉強し直して、皆さんの中にも、この世の中だからこそ、生きるということについて、皆さんなりの答えが出せるような、哲学ができるような公演にしたいと思って「エコーズ・オブ・ライフ」をつづりました。
<改めて、お誕生日おめでとうございます>
ありがとうございます。
<たくさんのファンの皆さんに囲まれたああいう光景の中で迎えられた30代、いかがでしたか>
30歳になるんだなっていう気持ち。今、30歳って言われて「30歳か」って思ったんですけど、でも、自分が本当に幼い頃からずっと思っていたその30代っていうものと、今自分が感じているこの体の感覚や精神状態も含めると、全然なんか想像と違っていたなって思いますし、まだまだやれるなっていう気持ちでいます。なんかエコーズの中でも、その未来って何とか、過去って何みたいなことがありますけど、本当に未来は自分が想像しているよりももっともっと良くもなるし、今ということの中で最善を尽くしていくことで、自分の中では30(代は)おっさんじゃん、って思っていた頃とは違った30代を迎えることができたなって思ってます。
<30代の抱負を>
自分の中ではフィギュアスケート年齢としては劣化していくんだろうなっていう漠然としたイメージがあったんですけど、例えば野球とかサッカーとかに置き換えて考えてみたら、これからやっとその経験とか自分の感覚であったり、技術だったりとかが脂が乗ってくる時期だと思うので、自分自身の未来にそれこそ希望を持って絶対にチャンスをつかむんだっていう気持ちを常に持ちながら、練習もトレーニングも本番も臨みたいなと思います。
<文字が音になるという発想が面白い>
元々、自分は、光景が例えば色とかが音になってたりとか、感情になったりとか、簡単に言うと、例えば、赤っていう色に対して、情熱って思う方もいらっしゃったら、それが恐怖と捉える方もいらっしゃる。そこはなんか人それぞれの解釈なんだけれども、僕は音として割と小さい頃から聞こえてきたタイプだったんですね。絶対音感があるとかではなくて、何となくメロディー的な感覚で聞こえてくるような感じがしてて。
そういった自分の経験だったりとか、またフィクションとして書く中で、この子にどういう能力を持たせようかなっていうことを考えた時に、自分がトレーニングとしてやっている言葉の抑揚であったりとか、意味であったりとか、そういったものを表現するっていうことを、その物語の中に入れ込んで、哲学がその音として体に入ってくる。その哲学が音楽になって、プログラムができあがるということを、いろいろ発想を飛ばして書いていった物語です。
「運命が人それぞれきっとある」
<思わず書き留めたくなるような言葉がたくさんありました。一つ選んで、思いを語ってください>
いろんな哲学書や、自分が大学で履修していた教授の本であったりとか、そういったものを読み直して、いろいろつづっていったんですけど、運命っていうのが偶然の連なりっていうことを、哲学書をいろいろ読みながら学んでいって、すごくすごく面白くて、何でこんな偶然がつながっていったんだろうていうような運命が、人それぞれきっとあるんだろうなって思って、それが皆さんの中で、いろいろ振り返った時だったりとか、また現在進行形で運命を感じているような時に、こんなにめったに出合えないような、こんな偶然の出来事に出合えたんだっていう喜びであったりとか、奇跡みたいなことを、ぜひ感じてもらいたいなって思ってつづった文章の一つです。
<衣装について>
やっぱりノバの衣装ですかね。今まで映像の中と実際に演技するっていう衣装のリンクということをしたことがなかったので、割と本当にファッションに使えるような服を氷上で着るということは、結構難しかった。でもやっぱり、ノバという主人公の衣装には、かなり思い入れが強いものがあります。
また今回、フィギュア(スケート)をずっと専門にしてくださっている方も含めて、また新たにそのフィギュアを作ってこられなかった方も参加してくださっていて。何着も何着もそのアレンジを繰り返して作り上げた衣装たちもたくさんあるので、リプレイだったりとか、ギフト、プロローグとはまた違った毛色のアイスストーリーになっていますし、そういった衣装も含めてフィギュアっぽくないっていうか、エコーズじゃないと見られない衣装の布感であったりとか、そういったものもぜひ感じてもらいたいなって思ってます。
<映画のような映像を多用されていた。撮影に要した時間と、演技やお芝居に挑戦したかったんですか>
後ろの方の質問からなんですけど、1回僕、映画に出演させていただいたことがあって。お芝居というものをさせていただいたんですけど、本当に向いていないなって思ったんですね。だから映画に出たいとかそういう気持ちは全然なくて。ただ、ノバという主人公に対して演じるということに関しては何も違和感がなかったというか。やっぱり自分がつづった物語であって、自分が完全に入り込める主人公を描いているので、そこに関しては自分が演じないといけないなっていう感覚ではいました。 撮影に要した時間なんですけど、3日間ぐらいかけてですかね、丸2日間ずっとやって、半日ぐらいやって、もう1回半日取ってみたいなことと、プラスナレーション取りをしなきゃいけないので、ナレーション取りでもまた2日かけて取っているので。大変でした。
<音楽について>
リプレイが結構ゲーム寄りに作っていったので、新プロ(グラムを)作りつつも、割とクラシカルなものをやりたいなっていう気持ちがあったのと、また、今回のテーマ的にも哲学ということをしていたので、ピアノの旋律であったり、また気持ちが凛とするような曲たちを割と多めに選曲はしています。その中で、例えば、自分がそのストーリーを描く中で、ここは戦いたいところだなとか、ここは芯を持つべきところだなとか、ここは言葉をそのまま使いたいところだなとか、そういったことをいろいろ考えた中で、選曲をこだわっていったっていう感じですかね。
今回、一番悩んだのは5番目かな。5番目の曲の、ピアノのクラシックの連続のところからのバライチ(バラード第1番)っていうのがすごく、今までやったことのない、1回も(袖に)はけないで30秒間ずつぐらいでずっとプログラムを演じ続けることをやっているんですけど、あそこは(ピアニストの)清塚信也さんと一緒にクラシックのことも勉強し、どういう意味を込めて弾きながら、また僕もジェフリー・バトルさんに振り付けを頼んでいるんですけど、ジェフともいろいろ、こんなイメージで滑りたいっていうことを綿密に計算しながら作った十何分間のプログラムですね。
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