「予選なしのオープン参加」が特徴の全日本学生剣道オープン大会。会場では全国各地から集まった多くの学生剣士が日ごろの稽古の成果を競い合う=仙台市太白区で2019年12月14日、鈴木俊撮影

 「第18回全日本学生剣道オープン大会」(全日本学生剣道連盟主催、毎日新聞社など後援、NAX JAPAN、JPロジスティクス協賛)が14、15両日、仙台市太白区のカメイアリーナ仙台で開催される。「予選なしのオープンスタイル」の全国大会は、四半世紀の歴史を経て1000人を超す学生たちが集う大規模な大会に成長。昨年から海外の大学に所属する学生たちにも出場の門戸を広げた。関係者は剣道の精神を表した言葉「交剣知愛」(こうけんちあい)の思いを大会に込める。【曽根田和久】

 オープン大会の源流は1967年に始まった「全日本学生地域対抗剣道大会」にさかのぼる。北海道から九州まで各地区ごとに選抜された選手が団体戦で競い合う地域対抗の大会で、92年を最後にその歴史に幕を下ろした。その後、北信越地区学生剣道連盟で会長を務めた故・恵土孝吉さんらを中心に、代替大会の検討が進み、「普及・発展・充実」という三つの観点から「予選なし」のオープン大会実施が決まった。

北信越学生剣道連盟の折口築会長=北信越学生剣道連盟提供

 第1回のオープン大会が開かれたのは地域対抗が終了してから7年後の99年。関東、関西、東海、九州の4地区はすでに大規模な学生剣道大会が開かれていたこともあり、北陸の小京都・金沢が開催地となった。

 「出場選手が集まってくれるのか。財政面も含めて不安もありました」。当時を知る北信越学生剣道連盟の折口築(きずき)・現会長はこう振り返る。第1回に出場したのは約700人。剣道経験が浅くても参加できるように、個人戦に初段以下の部を設けるなど工夫も施した。その結果、全国大会の常連校ではない大学に所属する選手たちが何人も入賞した。多くの審判がボランティアで参加し、財政面の不安もクリアすることができた。

 大会は当初、北信越と東北の二つの連盟が隔年で開いていた。2011年に北海道、13年に中四国の各連盟が開催地に加わり、毎年実施されるようになった。出場者も徐々に増え、今大会は約1400人が出場するほどの規模に成長した。部門も11年からは初段以下の部と二段の部が統合して「二段以下の部」となった。さらに昨年からは三段以上の部を3人制の団体戦に衣替えし、海外の大学に所属する学生もエントリーできるようになった。

東北学生剣道連盟の柴田良孝会長=本人提供

 オープン大会のスタートに大きく貢献した北信越学連の会長として折口さんが重視するのは「交剣知愛」の精神。「もう一度稽古(けいこ)をしたい」と思われるような稽古や試合をすることを求める教えで、「大会を通じてそういう出会いがあればいい」と語る。

 「もっと出場しやすい大会にするためにはどうすればいいのか。これからも考えていかなければ」とさらに先を見据えるのは今大会を主管する東北学生剣道連盟の柴田良孝会長。「大学時代に優秀な戦績が残せなかったとしても地域に残って剣道を続け、指導者になることもある」といい、学生剣道の裾野の広がりが、剣道全体の普及に欠かせないとの思いを強くしている。「若者らしく正々堂々と日ごろの鍛錬の成果を発揮してほしい」。杜の都・仙台に剣道界の未来を背負った学生剣士が集う大会が、まもなく開幕する。

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