△ヴィッセル神戸1―1柏レイソル△(30日・三協フロンテア柏スタジアム)
心が折れかけた。神戸は0―1で迎えた後半40分過ぎにPKを獲得。しかし、FW大迫勇也のシュートは枠外へ飛んでいった。
試合は今季最悪とも言える内容だった。残留争い中の柏の圧力に後手に回り、試合開始直後の失点を取り返せない。その中で得た千載一遇の好機を逸し、大迫は思わず、膝から崩れ落ちた。
残り時間はわずかでも諦めるわけにはいかなかった。MF山口蛍が大迫を抱きかかえて起こした。大迫は「切り替えてやるべきことだけを考えた」と顔を上げた。次の好機はすぐに来た。CKからのボールを大迫が頭で合わせる。が、今度はポストに嫌われた。
万事休す――かに思われたが、土壇場で執念が連鎖した。
再びCKからのこぼれ球をDF酒井高徳が中へ放り込む。大迫が頭で落とし、波状攻撃を仕掛けると、最後はゴール前にいたFW武藤嘉紀の眼前にボールが来た。冷静に左足で流し込み、ネットを揺らす。
一度はオフサイドと判定されたが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)を用いた長い協議の末、得点が認められた。その瞬間、武藤は「感情が爆発した」と脱いだユニホームを左手でぐりんぐりんと回し、ほえた。時計の針は後半58分を指していた。
劇的な展開で最終節での自力優勝への望みをつなぎ、吉田孝行監督は「ポジティブな(勝ち点)1だ」と強調した。しかし、選手からは低調だった試合内容に反省の弁が出た。
中2日でアジア・チャンピオンズリーグ・エリートの浦項(韓国)とのアウェー戦も控える。「最後は勝つのみ。どれだけ疲労があっても、痛みがあっても、勝利のために全てをささげたい」と武藤。その先に歓喜が待っている。【生野貴紀】
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