【ガ大阪-神戸】5大会ぶり2度目の優勝を決めて喜ぶ神戸の選手ら=国立競技場で2024年11月23日、宮間俊樹撮影

サッカー第104回天皇杯全日本選手権決勝(23日、東京・国立競技場)

○ヴィッセル神戸1―0ガンバ大阪●

 華麗さから泥臭さへ。神戸がモデルチェンジを経て、5大会ぶりに天皇杯を国立競技場のピッチで掲げた。

 後半19分、GK前川黛也が敵陣深くまでロングボールを送る。受け手の選手はボールを収めきれなかったが、こぼれ球を大迫勇也が拾い左にスルーパス。走り込んだ武藤嘉紀のシュートは相手にブロックされたが、そのはね返りを宮代大聖が右足で押し込んだ。

 宮代は「(周りを)信じて走ったらボールが転がってきた。ヴィッセル(神戸)らしい攻撃だった」と胸を張った。

 「ヴィッセルらしさ」の意味はここ1、2年で大きく変わった。

 前回優勝した2019年度の天皇杯では、元スペイン代表のイニエスタらを擁し、スペイン1部のバルセロナを手本にしたポゼッションサッカーで、クラブ史上初のタイトルを獲得した。

 しかし、その後は理想を追うあまり、成績が安定せず、監督交代を繰り返した。22年のJ1リーグ戦での開幕11戦未勝利などを経て、チームは「現実路線」にシフトした。

 22年6月に就任した吉田孝行監督の下、前線から積極的にボールを奪っての速攻や、ロングボールを使ってシンプルに相手ゴールに迫る攻撃を追求してきた。やるべきことの明確化と、ハードワークへの意識を浸透させたことが実を結び、昨季はJ1初優勝を成し遂げた。

 この日は、ロングボールを蹴らせまいと前線から圧力をかけるガ大阪の守備に苦しめられる時間帯もあったが、攻撃の組み立て方はぶれず、後半の決勝点につなげた。

 5大会前の決勝でもフル出場した酒井高徳が語った言葉が象徴的だ。

 「きれいなサッカーだけが勝てるサッカーではない。それもできる強さを、自分たちは見せられた」

 残り2試合となった今季のJ1でも、2位の広島に勝ち点3差で首位に立っている。エースの大迫は「タイトルを取り続けるチームになりたい」と言葉に力を込めた。リーグ連覇との2冠達成も目前だ。【高野裕士】

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