大相撲九州場所8日目(17日・福岡国際センター)
○琴桜(上手ひねり)美ノ海●
看板力士が上位戦線を引っ張る。満場のファンも納得の展開で琴桜が着々と白星を重ねている。粘る相手を最後はねじ伏せ、「落ち着いて(相撲が)取れていると思う」。好調の要因は、心に「鬼」を宿すことにある。
自己最高位の東前頭4枚目まで番付を上げた美ノ海とは、幕内では初顔合わせ。相手得意の左四つになってもかまわず寄り立てる。こらえた美ノ海に下手投げを打たれるなどてこずる場面もあったが、最後は深く取っていた右上手でひねり、土俵に転がした。
2024年3月の春場所での大関昇進後は10勝、11勝、10勝と「大関の勝ち越し」と呼ばれる白星を挙げてきたが、9月の秋場所は腰を痛めていた影響もあり、8勝7敗。ホープ・大の里の場所後の大関昇進で、早くも存在感がかすみかけていた。
改めて思い起こしたのは、しこ名を受け継いだ祖父で先代師匠の元横綱・琴桜(07年死去)にかけられた言葉だった。
「鬼になれ」
当時小学生だった琴桜にしてみれば、「比喩表現で理解することが難しかった」と素直に打ち明ける。ただ、祖父と同じ頂に立とうとする今なら、その意味をかみしめることができる。
「厳しくいけよ、と。甘えも弱さもいらない。上がっていくしかないですからね」
ここ2場所はともに終盤に3連敗を喫するなど「弱さ」を露呈してきた。師匠で父の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は「先場所を引きずらないという気持ちでやっているのでは」と評す。そして、こうも言う。「弱音を吐くようなら先代も天国で怒ると思いますから」
気持ちの強さが問われる後半戦が始まる。【岩壁峻】
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