<トライアスロン日本選手権 再起をかける選手たち②>

2年ぶりの日本選手権優勝に向けて室内で体を動かす林愛望=愛知県美浜町の日本福祉大で(山内晴信撮影)

 トライアスロンの第30回日本選手権(日本トライアスロン連合、東京新聞・東京中日スポーツ主催)が17日に東京・お台場海浜公園周辺(51.5キロ=スイム1.5キロ、バイク40キロ、ラン10キロ)で開催される。パリ五輪が終わり、アスリートにとっては一区切り。新たな目標へ再出発する有力選手4人を紹介する。   ◇    ◇  今夏のパリ五輪はあえて目指さなかった。林愛望(20)は「出場するなら、2、3年前から海外を転戦してポイントを稼ぐために、学校に行けなくなる。高校生活を満喫したかった」とさっぱりとした表情。次の4年間では国際舞台に打って出る。「2026年に愛知であるアジア大会で優勝することが一番の目標。28年のロサンゼルス五輪にも出られたら」と地元での栄冠と、その先の躍進を思い描く。

 林愛望(はやし・まなみ) 日本福祉大・まるいち所属。愛知・岡崎城西高3年時の2022年、史上最年少の17歳で日本選手権を制した。今季はアジアカップで4度優勝し、8月の世界大学選手権銅メダル。20歳。愛知県西尾市出身。

◆理想の動きが実現できない…苦しんだ昨シーズン

 原点は保育園のころ。仲の良かった一つ年上の女の子が、小学校の校内マラソン大会で1位になったと聞いた。負けず嫌いな性分。「自分も一番をとりたい」と、誰に言われるでもなく走るようになった。毎朝のランニングを欠かすことなく、大会では6年連続で学年トップ。並行して取り組む競泳でも力を伸ばし、高学年になって今も指導を受ける倉内千紘コーチに誘われた。「トライアスロンっていう競技があるんだけど」

プールで体を動かす林愛望=愛知県美浜町の日本福祉大(山内晴信撮影)

 2年前、史上最年少の17歳で日本選手権を制覇。ただ日本福祉大に進み、海外で数多くのレースに挑んだ昨季は苦しんだ。理想の動きを体現できず、強敵の欧州勢には歯が立たない。「得意なはずのランで差が開く。何で練習しているんだろう」と心が折れかけた。

◆20代になっては初めて迎える今大会は雪辱のチャンス

 自信を取り戻させたのは、日々の地道な取り組み。今でも毎朝のランニングやバイクを怠らず、午後は大学の水泳部、陸上部で体を動かす。週末には実家に戻って倉内コーチの薫陶を受け、課題と向き合う。着実に力を伸ばし、アジア勢との争いや日本人同士の対決では安定して好成績を残している。

室内で体を動かす林愛望

 昨年の日本選手権では、国内では珍しく敗北を喫した。パリ五輪代表の高橋侑子(相互物産)に大きく離されての2位に「スタート付近でしか一緒にレースができなかった」と悔しがる。5日に誕生日を迎え、20代になって初めての日本選手権(17日、東京・お台場海浜公園周辺)は、雪辱のチャンスでもある。「今年は少しでも長く一緒にレースをして、対等に戦えたら」。日本勢では唯一と言っていい壁に挑み、世界へ向けて新たな一歩を踏み出す。(山内晴信) 【連載①】「人生で一番大きな目標」は出場すらできなかった 元王者・北條巧は、再起を賭けて4年ぶりのお台場に挑む
【連載②】パリ五輪より「高校生活を満喫したかった」史上最年少女王・林愛望 ロスを目指し、Vを国際舞台の弾みにする(この記事)
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【連載④】「納得いくまでやってみてもいい」 五輪で一線を退くつもりだった高橋侑子は、競技人生の「延長戦」に挑む

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