◆突然の電話。三沢は半分笑ったような声で
「新日本ではどのくらいもらっていたの?」 三沢からの電話はファイトマネーの確認だった。齋藤が素直に新日本での額を伝えると、三沢は半分笑ったような声で言った。 「別に『来てくれ』ってわけじゃないんだけどね」 「いや、お金はいいです。とにかくノアでやりたいんです」 齋藤は懸命に熱意を訴えた。2000年10月11日、ノアのテストとして試合に臨み、フリーでの参戦が決まった。◆持ち技を出し尽くしても…「これが王道か」
新日本では相手を倒すための「攻撃」を学んできた。空手が得意な齋藤自身も攻めることに魅力を感じている。だが、ある日、三沢と対戦したときのことだった。これまでまったく経験したことのない感覚に陥った。 持ち技をこれでもかと繰り出し、攻め続けた。三沢はそれらすべての技を受け、なおも「来いよ」と言ってくる。もう持ち技は全部出し尽くしていた。それでも三沢は倒れない。これ以上、何をしたらいいんだ、もうやる技がない…。青ざめてきた。プロレスの奥深さを初めて学んだ。プロレスラー人生について語る齋藤彰俊=2024年9月(中西祥子撮影)
「そのとき、受けの怖さを知りましたね。技をすべて受けきられて、これ以上、何をしたらいんだろう、って。攻められるのとは違う、恐怖心がありました。これが王道か、ノアが受け継いだメジャーのすごさなのか、と感じました」 「攻めの新日本」と「受けの全日本」。そう表現されることが腑(ふ)に落ちた。 「それとね…」と苦笑いしながら齋藤は続けた。 「いろんな格闘技の中で肘って危ないから禁止になっている。でも三沢さんはそれが得意技なので」 三沢が放つエルボーの衝撃は体全体に響き渡る。何十発、何百発と受け、齋藤の左側のあごの骨は変形し、いまも曲がったままだ。受けとエルボー。三沢のすごみを嫌というほど体に刻み込み、その日を迎えた。 インタビューが始まってから1時間ほど経過した。あのときの話を聞かなくてはならない。だが、とてもデリケートな事象だ。私が少し躊躇(ちゅうちょ)していることに気づいたのか、齋藤は「試合のことですよね、大丈夫ですよ」と私に優しいまなざしを向けた。◆あの日の「違和感」
2009年6月13日、広島県立総合体育館でのGHCタッグタイトルマッチ。王者の齋藤、バイソン・スミス組は、挑戦者として三沢、潮﨑豪組を迎えた。激しいぶつかりい合いは会場が沸く熱戦となり、試合時間は25分が過ぎた。齋藤はバックドロップの体勢に入り、三沢を抱えた。肩くらいまで持ち上げたとき、重さを感じた。その違和感が残っている。ノア・グローバル・タッグリーグ戦08で優勝した齋藤彰俊(手前左)と、バイソン・スミス(奥左)=2008年4月27日、東京武道館で(池田千恵子撮影)
「物理的に、何かを動かすとき、初動が一番重い。そこから軽くなっていくんですが、あのときは違った。なぜなのか、わからない。でも鮮明に覚えています」 三沢を投げ、齋藤はすぐにニュートラルコーナーへ移動した。立ち上がってくる三沢へ、ラリアットを放とうと考えていた。だが、様子がおかしい。明らかにいつもと雰囲気が違う。 医師がリングに上がり、心臓マッサージが始まった。選手が集まり、トレーナーは人工呼吸を試みている。三沢は救急車で運ばれ、齋藤もすぐにタクシーで病院へ向かった...残り 1826/3244 文字
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