4年に一度行われる、世界一過酷と呼ばれているヨットレース「ヴァンデ・グローブ」。たった1人で、風だけを頼りに世界を一周します。
フランスをスタートして、アフリカ大陸を南に行き、そして太平洋を横断し、再びフランスに戻ってくるおよそ3カ月の大航海なんです。
このヴァンデ・グローブに日本人で唯一出場するのが、白石康次郎さん(57)です。
10日に開幕するのですが、出発直前の様子を取材しました。
■「たとえ死んでも…笑顔で放送を」
時にはたった1人で6メートルを超える大波を乗り越え、時にはクジラに衝突するアクシデント。
大海原に放り出され、身動きが取れなくなることもあります。
世界一過酷と言われるヨットレース「ヴァンデ・グローブ」に日本人として唯一参加しているのが、白石康次郎さんです。
2度目の出場となった前回大会。スタート間もなく、メインセールが破れるトラブルに見舞われるも、1週間かけて修理しました。
白石さん「頑張って、このセールでどこまで行けるかチャレンジします。新たな冒険が始まります!」
いくつもの荒波やトラブルを乗り越え、アジア人で初めての完走を果たしました。
3度目となるスタートの1週間前、白石さんに密着しました.
白石さん「(Q.3度目の出場、気持ちの違いは?)いや、もう気持ちは一緒でね。本当に帰って来られるかどうか分からない命がけのスポーツですから。いつもと一緒で覚悟を決めて行くと。生涯で一番きついレースになるんではないでしょうかね」
何度も世界一周にチャレンジしてきた白石さんが、生涯で一番きついレースになるというには理由がありました。
白石さん「地球の変化が激しくなったので、過去のデータが役に立たなくなった。今までにないことが起きる。今までのセオリーが通用しない」
竜巻の発生や豪雨など、近年、世界中で頻発している異常気象。予測できない気候のため、これまで以上に危険が伴います。
しかし、地球が変わりつつある今だからこそ、白石さんは自分たちにしかできないことがあるといいます。
白石さん「せっかくヨットで燃料なしで世界一周するので、何か協力したいなと思って。我々はもっと勉強して、地球とのコミュニケーションの仕方を考えないと」 日本人として唯一参加する白石康次郎 この記事の写真
実は前回大会、海の観測データの調査に協力。水温や塩分などを測る観測ブイを海に投げ入れていました。
今回も調査に協力する予定で、これにより異常気象のメカニズム解析に役立つというのです。
白石さんに観測装置を託した担当者はこう話します。
国際モノハルオープンクラスクレール・ヴァイエさん
「誰も行けない所にヨットで行って、機器を設置してくれるのは本当にありがたい。セーラーたちも調査に協力することが、海を守ることになり、大きなメリットがありそう」
いよいよ、10日に開幕するヴァンデ・グローブ。スタートとゴールにもなる町、フランスのレ・サーブル=ドロンヌは、開幕前にもかかわらず、すでに大勢のファンの姿がありました。
スタートまでに200万人を超える人々が駆け付けます。
白石さんは現地でも大人気!
女性「前回は白石康次郎さんを応援しました」 男性
「侍衣装は個性的で、いかにも日本代表という感じが良かった」
4年に一度の大冒険がいよいよ始まります。
白石さん「僕の場合は、トラブルが多くてもリタイア率は低いんですね。とにかく粘り強く走るのが、僕の一番いいところなので。最後まで諦めないで精一杯走りたい。たとえ死んでも、『面白いやつだったな』と笑顔で放送してください」
次のページは
■感謝の涙 感じる「覚悟」■感謝の涙 感じる「覚悟」
出発前の日本で行われた壮行会も取材しましたが、あいさつのスピーチで白石さんが大粒の涙を流しながら、意気込みを語っていました。
言葉を聞くと、目の前の方たちへの感謝の涙でした。「覚悟」というのを感じました。
まずは、無事にレースを終えてほしい。満足いく成績も残してほしいです。
白石さんのレースの様子は今後、船の上から中継も含め、定期的にお伝えします。
(「報道ステーション」2024年11月8日放送分より)
この記事の写真を見る鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。