学生相撲で近年、金沢学院大(石川県)の活躍が著しい。今年は個人、団体とも各種大会で頂点に立ち、11月2、3日に開催される「第102回全国学生相撲選手権大会」(毎日新聞社など主催、大正製薬協賛)=以下、選手権=での初優勝も視野に入る。しかし、その置かれた状況は複雑だ。選手権のクラス分けを決める大会で敗れてしまい、多くの試合を勝ち抜く必要があるBクラスとなったためだ。初の栄冠に向けて、チームは稽古(けいこ)を重ねている。【大村健一】
「今年は個人、団体ともに選手権を目標にしてきた。(逆境をはねのけて優勝する)シナリオはできましたね」。アマチュアの主要大会の一つ「国民スポーツ大会」で成年男子個人を制した大森康弘選手(3年)は、そう語って笑みを浮かべた。現在のようなクラス分けが導入された1985年以降、団体戦でBクラスから頂点に立った大学はない。目指すは「史上最大の下克上」だ。
選手権は、出場大学が最上位のAクラスから12校ずつ、各種大会の成績をもとにクラス分けされる。下位のクラスに入ったとしても、勝ち抜いていけば、個人戦、団体戦ともに上位クラスへ進出は可能だ。ただし、上位に比べて試合数が増えるため、優勝までの道のりは遠くなる。
金沢学院大は今季、大森選手らが個人戦で活躍。さらに、5月の全国選抜大学・社会人対抗九州大会や9月の全国選抜大学・実業団刈谷大会などの団体戦でも初優勝し、チームとしても頭角を現している。しかし、選手権のクラス分けにつながる西日本学生選手権では、朝日大と近大に敗れて団体3位に終わった。西日本勢のAクラスは2枠で、今回の選手権ではBクラスからのスタートが決まった。
金沢学院東高(現・金沢学院大付高)で、遠藤(大相撲東前頭7枚目)を指導した大澤恵介・金沢学院大総監督は「高望みはせず、まずはAクラスに上がること」と話す。試合数は多くなるものの、勝利を積み重ねることで勢いをつけてAクラスの強豪に挑む展開が狙いだ。
地方大学の活躍は異色 躍進の背景
相撲の強豪大学が関東や近畿の都市部に集中する中、金沢学院大相撲部は2002年に創部した。石川県は元横綱・輪島や新大関・大の里などを輩出した「相撲どころ」。その熱気を背に躍進を続けてきた。昨年は池田俊選手(現ソディック相撲部)が、部の歴史で初めてアマチュア横綱となった。
特徴的なのは、大学生だけでなく、強豪として知られる付属校の中高生や女子選手も一緒に稽古をする点だ。稽古場には土俵が二つあり、各年代・カテゴリーの選手が、申し合いやぶつかり稽古を繰り返す。強い相手に挑むことで、勝つために自ら工夫する力が身につき、自主性が養われている。
近年、好成績が続いていることについて、大澤総監督は「特に変えたことや、思い当たることはない」と話す。ただ、「一つ挙げるとすれば、付属高校から進学することを選んだ選手は増えたかもしれない」と推測する。日大に進んだ遠藤や、東農大に進んだ豊山(元前頭)のように付属高から首都圏の強豪へ進むケースがかつては多かったが、ここ数年は池田選手や大森選手のように金沢学院大へ進学する選手が増えているという。
団体戦制覇のカギは?
選手権では、大森選手や、6月の西日本選手権の個人戦を制した篠侑磨選手(2年)らが個人戦で上位をうかがう。一方、団体戦の課題は選手。優勝した九州大会や刈谷大会は3人制で、敗れた西日本学生選手権は5人制。総合力アップが選手権初戴冠のカギとなりそうだ。活躍が期待される可貴秀太主将(4年)は「稽古の質も集中力も上がってきている。チャレンジャーとして、『自分が勝つ』という気持ちを全員が強く持ち、戦いたい」と意気込む。
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