引退会見で笑顔を見せる伊東輝悦選手
伊東選手は、Jリーガーとしては現役最年長。1996年のアトランタ五輪で、日本がブラジルに勝利した「マイアミの奇跡」で決勝点を挙げ、一躍時の人になった。 記者会見での主なやりとりは次の通り。(佐藤大)50歳を迎える直前は
「マイアミの奇跡」伊東輝悦は49歳の今もキレキレ 現役Jリーガー最年長「面白えからやっている」の金言
◆そんなオジサン、いてもいいんじゃねえかな
—このタイミングで引退を決断した理由は。 伊東 このタイミングというか、ぼく自身は年明けて、今シーズンの最初のころに考えていたんで。あとはいつオープンにするか、というところだったんですけど、それはチームの状況とかいろいろあったんで、結果、今のタイミングになったというところですかね。 —50歳という節目が引退を考えるきっかけに? 伊東 それは一つにはあるのかな。ただ40歳を超えて、41、42、43となったときにその時点でも辞められるタイミングはあったと思うんですけど、ただ体は、若い頃に比べたら量は落ちたかもしれないですけど、まだクオリティーや経験を生かしながらできるかな、と思ったりして。そのときに50までプレーできたら自分の中で面白いなというか、そんなオジサンいてもいいんじゃねえかな、みたいな思いはありましたね。50歳の誕生日を前にした心境を語った伊東輝悦選手=7月16日、沼津市内で
—引退をチームの選手たちに打ち明けたときはどんな反応でしたか。 伊東 どうだったんだろう。びっくりしている選手もいたと思うし、中にはやっと辞めるんだと思った選手もいるかもしれない(笑)どうでしょうね。 —引退してから何をするのか。 伊東 全く決めていないです。 —やってみたいことは。 伊東 これが、というところまではないので、これから考えたい。◆涼しくなってきたら体が動いて、寂しいなと
—ゴンさん(中山雅史監督)のトレーニングは相当きついと聞いているが、苦じゃなかった? 伊東 苦ですよ(笑)しんどいだけですよ。ま、でも若い選手とあーだこーだいいながらプレーするのは楽しかったです。会見後のフォトセッションでの伊東輝悦選手
—家族に伝えたのはいつ? 伊東 今週日曜かな。 —奥さんは何と? 伊東 お疲れさまという感じでしたね。ただ息子はちょっとびっくりしていました。えっという感じでした。今、高2ですけど、物心ついたときからサッカー選手でいて、十数年それが日常だったので、だからだと思うんですけど。そこで妻が「まだやってほしいの?」って聞いて、「50だぞおれ」って言ったら、「それもそうだな」みたいな。そんな感じでした。 —かつて「しんどさが楽しさを凌駕したら体はもたない」と答えていたが、実際のところは? 伊東 今年の夏の暑さは本当にきつくて。体動かねえなとは思ったんですよね。ただ、今涼しくなってきたら、若干体動くな、と思ってきたら、寂しいなと思ってきているところもあるんですけど、でもやっぱしんどいですね。◆今あるチャンスをつかみとってほしい、それが今年なら一番
—引退するということに監督は何と? 伊東 まだ言っていないんですよ。あとで謝っておかないと。伝わっていると思ったから後でいいかと思ったら、あんまり伝わっていなくて。ゴンさんに申し訳ないなと思って、明日謝りに行きます(笑) —今シーズンまだあるが、どう貢献する? 伊東 今までと変わらずにしっかりトレーニングして、というところだけですね。 —現役生活で印象に残っている試合、プレーは? 伊東 これが、というのはないです。変な話、31、32年たっているので、昔のことは忘れているところもあるし、何だったら今が一番楽しいと思っているかもしれないですね。記憶が今一番鮮明だから。 —チームは昇格を争っているが、このチームがどうなってほしいか。 伊東 今思っているのは、残り4試合で昇格の可能性が十分にある。ただ、チャンスはそんなにたくさんこの先あるか分からないので、今あるチャンスをつかみとってほしいな、ということ。若い選手がピッチの上で躍動している姿をぼくはみたいな、ということ。一番いいのは最後に一緒に喜べたらいいなということ、ですかね。◆4年に1回みんなが思い出してくれる、いい思い出
—5年後、10年後にこのクラブがどうなっていると良いと思うか。 伊東 地域の皆様に愛されるクラブであってほしいし、一番早いのは今回の(昇格の)チャンスをものにできれば、より一体感が増すというか、より東部地域が盛り上がると思うし、そのきっかけが今シーズンだったらいいな、と思います。沼津に加入1年目、磐田との練習試合でプレーするMF伊東輝悦㊧。右は磐田のMF中村俊輔=2017年3月26日、磐田市のヤマハ大久保グラウンドで
—昔のことは忘れたということだが、アトランタオリンピックのことは。 伊東 それは覚えています(笑) —ブラジル戦のゴールはどのような思い出か。 伊東 ほんとただ、いい思い出です。あれがあったことでいろんな方に声かけられたりとか、今でも4年に1回ぐらいでみんな思い出してくれるんで。 —プロになったころと現在で、サッカーのとらえ方に変化はあるか。 伊東 若いころは、ミスしちゃいけない、じゃないけど、完璧にプレーしようと、ちょっと思っていたところがあるんですけど、やっぱサッカーはそういうもんじゃないし、完璧が何かといったら、それも分からないし。ただ、それを経てから、自分らしくありたいというか、自分ができることで精一杯やりたいな、という変化はありましたけど。そういう変化もあったから、長くプレーできたかな、とは思っているので。◆日本代表の頃は大きく見せようというのが強すぎて
—それはいつぐらいのことか。 伊東 精神状態があんまり整っていなかったのは、日本代表に入っているころ。あのころが自分を良く見せたい、大きく見せたいじゃないですけど、うまく見せようというところが強く働きすぎて、自分らしさがちょっとなかったなということをそのとき思って。そのあとからは自分ができることを精一杯やろう、と思ってやりました。したら、こんなんになっちゃいました(笑) —このチームがJリーグに参入したタイミングで入った。このクラブの成長過程をどう思う? 伊東 入ったときはライセンスもなくて、今はライセンスをとれた。実際、順位も上がれる状況になりましたし、選手も(監督が)ゴンさんになってから2年ですけど、間違いなくクオリティーも上がっていると思うし、タフになっていると思うし、一歩ずつではあると思いますけど、成長しているんじゃないかと思う。このまま歩みを続けてほしいなと思います。 —ファン、サポーターにメッセージを。 伊東 ぼくからは一言です。これからもサッカー楽しみましょう、と。それに尽きます。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。